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#133 福祉とお金。

「会社=売上・利益を上げ、大きくなるためにある。民間企業が福祉事業を行おうとすると、利益重視になるため、本質的な寄り添う支援はできない。「奉仕の心」が、寄り添う支援の本質である。」

そう捉えていませんか?
少なくとも、かつての自分はそう捉えていました。

自分は、NPO・一般社団法人の障害福祉事業所の支援員を計4年経験しています。昨年転職し、営利企業の障害福祉事業所の責任者になって1年以上が経過しました。

頭ではなんとなく違和感を感じていたものの、ようやく肌感覚で上記の考え方は「ちょっと違うかもしれない」と気づきました。その感覚を文章で明瞭にしてくれた本があります。

「9割の社会問題はビジネスで解決できる/田口一成」です。

社会的企業家集団を生み出す仕組みを構築しているボーダレスジャパンの代表田口一成氏の著作です。

印象的な文言を下記に引用します。

「この時気をつけなければいけないのは、善意だけで買ってもらう商品やサービスは長続きしないということです。お客さんは最初は社会貢献という意味合いで買ってくれることがありますが、1回買うとその善意が満たされてしまい、単発的な関係で終わってしまうことも少なくありません。」

「「社会貢献になるから買う」だけではなく、シンプルに「モノがいいから、サービスがいいから買う」という要素がないと、選び続けてもらえないのです。つまり、非効率を含んだビジネスでありながら、「これ最高だよね」と生活者が買い続けたくなる商品やサービスをいかに提供していくのかが重要になります。」

(9割の社会問題はビジネスで解決できる/田口一成,p.38-39, PHP研究所,2021年)


一つ例を挙げます。

道路を挟んで、ふくふるの向かいにあるベーカリー店「まちなか夢工房」は、ただのパン屋さんではありません。

障がいを持つメンバーさんと共に働く、就労継続支援B型事業所です。

同事業所は、福祉的就労の場と言われています。障害福祉事業の一つである、同事業所は、定期的に仕事の受注を受け続けなければなりません。なぜなら、最低賃金以上を支払うA型か、工賃を支払うB型かによって、雇用契約を結ぶ/結ばないの違いはありますが、継続して働いていただくことには変わりないからです。

継続して働いていただくためには、事業所が継続して工賃を支払うことが必要となります。更に、継続した工賃を支払うだけではありません。現在、就労継続支援B型事業所では工賃向上計画の作成が求められています。

つまり、まちなか夢工房は仕事を受注(お客様にパンを販売)し、メンバーさんに工賃(お給料)を支払うだけでなく、工賃の向上も求められているわけです。

では、工賃を向上させるためにはどうすればよいか?

シンプルに、経費を削減するか、売上を更に上げるか、のどちらかとなります。

まちなか夢工房では、経費をあまりかけず、売上を向上させるため、キャンペーン情報を発信したり、店先で呼び込みを行ったり、お客様を飽きさせないよう新メニューを開発したり、地域の人々を巻き込んだりと、事業所一丸となり「営業努力」を行ない続けています。

この「営業努力」の理由は、まちなか夢工房で活躍する障がいを持つメンバーさんの「工賃向上のため」というわけです。非効率でありながら、「これ最高だよね」を生み出す工夫を行うことは並大抵のことではありません。売上を上げようとする理由は、シンプルにメンバーさんのお給料を保証したいからなのです。

では、最初の問いに戻ります。
果たして、利益を追うことは本質的な支援ではないのでしょうか?

最低賃金は向上しつつありますが、工賃は事業所が決めることができるので、変わらない事業所はずっと変わりません。福祉事業所の工賃は景気に左右されず、事業所の裁量に委ねられています。

工賃が向上し、障がいを持つ人々の「できること」が経済的な側面からも増えれば、それは価値の高い「支援」と言えるのではないでしょうか。

例えば、給料が増えて、バスや在来線しか利用できなかった方が、月に1回でも新幹線を利用できるようになったら、当事者の活動範囲や広がります。自分で稼いだお金でパソコンを買うことができたら、もっともっとできることは増えます。

ご本人の支出を押さえるための金銭管理だけが福祉的な支援ではありません。事業所としての営業努力も、当事者の生活の質や幸福度を高めるための支援の一つと今の自分は捉えています。

利用者さんのニーズを満たすことのできるような相談支援業務・直接支援業務を行う。事業所として、利益を上げる努力をする。これは両立できるし、むしろ、両立することこそが、福祉の本質に真に迫れるのだと思います。

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