家の前を電車が通る暮らし

建物の構造、日当たり、築年数、立地条件、様々な要素を検討し、悩んだ末きめたのが、今の俺が住んでるこのマンションや。
鉄筋コンクリート構造、築２０年、東向き、駅から徒歩５分、家賃６万、大方俺の希望を満たしていたのがこのマンションやってん。
ただ一つ心配ごとがあってな、マンションの前に線路が通ってるねん。
一応部屋決める前の内覧の時、電車の音は確認して、まぁ大丈夫やろって範囲の騒音やから決めてん。

住んでみるとやっぱり最初は音が気になったわ。家で映画見ててもちょうどいいシーンに限って電車通ったりして、何言ってるか聞こえにくかったりするしな。
でもな、１ヶ月もすると、不思議と電車の音が気にならなくなんねんな。
人間の慣れる力っていうか適応能力ってやっぱすごいよな。いつまで経っても職場環境に適応できへん俺にもこんな適応能力があってんなって関心したもんな。

しかも、線路の近くに住むって嫌なことばっかりじゃないねん。
家におって暇なとき、ベランダの窓から下見たら電車走ってるねんで。
そんなんなかなかないで。
わざわざカメラ持って駅で電車を来るのを待つ撮り鉄っていうのがおるくらい魅力のある電車を、家でくつろぎながら、気の向いた時に眺められるられるなんて贅沢やなぁって思うねん。
夜はうるさいんちゃうのって思うかもしれんけど、意外とそうでもないねん。
確かに線路に近すぎて頭痛くなるくらいうるさかったらあかんけどな、寝よう思っても考えごとが次から次へと湧いてきて寝られへん時なんか、電車の音が頭の中の考えごとを弾き飛ばして駆け抜けて行ってくれるから、逆に気づいたら寝てしまってたなんてこともあるねん。

さらにおすすめが、夜に部屋の電気消して、ベランダから眺める電車がめっちゃ綺麗ねん。
暗闇を、体中から光を放つ大きな物体が颯爽と駆け抜けて行く様は、電車好きじゃなくても心惹かれるわ。
少し肌寒い時期に風呂から上がってポカポカの状態で、ジュース飲みながら電車を眺めるなんて最高やで。ヘッドホンで好きな音楽かけたりもしちゃってさ。
俺のささやかな夜の楽しみやったわ。

普通に考えたら電車の通る近くに住むなんてデメリットでしかないけど、意外と住んでみるといいことも見つかるっていうか、考えようなんかな。