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僕、ベタ日記⑨バトルの時間

すっかり元気を取り戻した僕は、スイスーイと水槽の中をパトロール中。
『モアは、泳ぐの上手だねー♡』あっ、ママの声がする。
『そうでしょ?そうでしょ?今日も水槽の中、僕のお城は異常なし。平和な一日だねぇー』

と、その時、僕の視界に《知らないアイツ》の姿が飛び込んできた!僕ら魚は、目はいい方だし、何より視界が人間よりもずっと広いんだ。だから、後ろや横から迫りくる気配にも俊敏に気づくことができる。

『誰なの?君?』僕は見たことないベタに尋ねた。でも、返事はない。
『ここは僕のお城だ。出てけ!』今度は、さっきより強い口調で言ってみた。でも、アイツはこっちを真っすぐに見ている。なかなか手強そうだ。

そうか、ついにこの時が来たんだね。

僕は振り返ることなく、少し、後ろへ下がった。こういう時、相手に背中を見せるのは危険なんだ。落ち着いて、ちゃんと間合いを取る方がいい。僕は体勢を整えると、アイツを目掛けて、一直線に泳いだ。さすがのアイツも、僕のスピードにはびっくりするはずだ。

あれれ?どうして?

アイツは全く怯む様子を見せなかった。それどころか、ヒレをもっと大きく広げている。これは、僕らベタが威嚇する時に見せるポーズだ。でも、そのヒレはよーく見ると大したことはない。それに、身体だって小ぶりじゃんか。僕はお店に居た頃、もっと大きなベタ達に、立派に広がる優美なヒレで何度も、何度も威嚇されたことがあるんだぞ。

怖くなんかない。怖くないもんねー。

気付くと、パパ、ママ、娘ちゃんが僕らの周りを取り囲み、この戦いの行方を見守っている。そう、僕は娘ちゃんの騎士、勇敢なナイトなんだ。こんな所で、負けるわけにはいかない!

僕はもう一度、ヒレをいっぱいに広げて、さっきより速いスピードでアイツを目掛けて突撃した。

おかしいなぁー。どうやら、これも効かないみたい。

落ち着け、モア。僕は気持ちをなだめるため、お気に入りのリーフに身を寄せた。いったん引くのも大事な戦術だって、お店で一番の古株だった赤ベタが教えてくれたことがある。ここは僕の安全地帯だから、大丈夫。どうしたらアイツに勝てるのか、作戦を考えなきゃ。

僕がもう一度、突撃しようとリーフを離れたその時、もう、アイツの姿は消えていた。あれれ??どこいっちゃったのー?

これって、やっぱり、僕の勝ち?!だよね?きっと怖じ気づいて逃げ出したんだ。たしかにアイツは少し痩せてて、ひ弱そうだったし、顔もぼんやりしてた気がする。

やったー!僕、勝ったよー。大切なお城と、大好きな娘ちゃんを守ることができたんだ。

そのあと、ぷかぷかと水面に浮かぶ、新しい水草が贈呈された。きっとこれは、勝利の証。勇敢な騎士への勲章に違いない。僕は浮かぶ水草の下にちょこんと潜り込んだ。

どう?冠みたいでかっこいいでしょう?

皆にも、僕の勇姿を見せてあげたかったなぁー。かっこよかったんだから。
今日はとっても、いい気分。
またねー。

ベタをフレアリングさせるため、お店では水槽の間に仕切り板を入れています。時々、その板を外すと、水槽越しに雄ベタ同士がヒレを広げ、威嚇し合うんです。闘魚の性ですね。フレアリングの際、ヒレを大きく広げるため、重なるヒレのくっつき予防にもなるんです。モアのように一匹で買う場合は、相手が居ないので、フレアリング専用の網?を使うor鏡を置く方法があることを知りました。もうお分かりでしょう?モアが戦っていた相手は…鏡に映るモア自身だったのです。姿を見つけた瞬間、ものすごい勢いとスピードで泳ぎ出したので、普段、ぼんやりしているモアの意外な一面を見ました。その後、柔らかい《アマゾンフロッグビッド》という浮かぶタイプの水草を入れてみました。一足早い、クリマスプレゼントです。勝利に満ちた顔で、水草の下に潜るモア。まるで草の帽子を被っているみたいで、可愛いーー♪
バトル、お疲れ様でした。

それでは、次回もどうぞお楽しみに。

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