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川辺の懐かしき再会

クミの毎朝の日課。
それは川辺でのジョギング。
朝の新鮮な空気を吸いながら、一定のリズムで走るのは気持ちがいい。

ある日の朝。
川辺を走っていると、一匹の猫が目に入った。
その猫は、川の向こう岸をじっと見つめている。

「変わった猫だな」
そう思いながら、クミは猫に近づいた。

猫は動かず、相変わらず向こう岸を見ている。
クミも猫と一緒に向こう岸を見てみたが、特に何も変わったものは見当たらない。

すると突然。
猫は川沿いをゆっくり歩き出す。

猫に興味を引かれたクミは、その猫についていくことにした。
猫もまるで、クミを案内するかのように時々振り返りながら歩いていく。

川にかかる小さな橋を渡り、猫は向こう岸へと進む。
不思議に思いながらクミが猫についていくと、そこには彼女が小さい頃に訪れたことがある古い家があった。

家の前で立ち止まる猫。
クミは驚きと懐かしさで胸がいっぱいになる。

「こんなところにあったなんて…」
そう思いを巡らせていると、猫が柔らかな鳴き声を上げた。

その瞬間。
猫の姿が薄れ、代わりにクミの大好きだったおばあちゃんが現れた。
亡くなったのが10年以上前だから、それ以来の再会になる。

「クミ、久しぶりね」
おばあちゃんは微笑みながら言った。

「あなたに一言伝えたいことがあってね」

「いつも見守っているから、どんな時も自分を信じて進みなさい」

おばあちゃんの温かい言葉に、クミは胸がいっぱいになり涙があふれる。
「…ありがとう…おばあちゃん」

クミがそう言い終わるのと同時に、おばあちゃんの姿は消え、再び猫が現れた。
猫は一度だけクミを見つめ、その後、どこかへ姿を消す。

クミはその場に立ち尽くしたが、おばあちゃんの言葉はしっかり胸に残っていた。
しばらくして気持ちが落ち着いたあと、また川辺を走り始める。

彼女の心は、澄みきっていた。
走りながらふと空を見上げると、きれいな青空。

クミは微笑み、いつもおばあちゃんが見守ってくれていると感じた。
「おばあちゃん、いつも見守っていてね」

その後ろ姿は自信に満ちていた。

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