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【試し読み】川﨑寧生『日本の「ゲームセンター」史』(序章より抜粋)

街なかにあるゲームセンター。日本のゲームセンターは世界に類を見ない独自の発展を遂げた娯楽施設で、そこには社会史、文化史、法制史など、さまざまな歴史的影響を見ることができます。本書『日本の「ゲームセンター」史』は、そんなゲームセンターの成立・発展・衰退の歴史を紐解き、ゲームセンターから日本の戦前・戦後史を読み取ろうという意欲的な書籍です。
本書ではゲームセンターを4つの種類に分類していますが、中でも興味深いのが「大人向けゲームコーナー」と「子供向けゲームコーナー」。「ゲーム喫茶」や「駄菓子屋」など、これまで光が当てられてこなかった空間に着目し、その社会的位置づけについて分析しています。戦後、とくに1960年代以降の風俗史としても貴重な一冊です。

川﨑寧生『日本の「ゲームセンター」史ーー娯楽施設としての変遷と社会的位置づけ』がおかげさまで好評発売中です!

ここでは試し読みとして、「序章」から一部を抜粋して公開いたします。
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*本記事は発売中の『日本の「ゲームセンター」史』から該当部分を転載したものです。

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●序章●

1 本書の目的
 本書の目的は、2019年度においても売上高としては7055億円、店舗数も1万2212店という、娯楽産業として少なくはない産業規模をほこる日本のゲームセンターについて、国内の娯楽文化の一つとして社会に根付き、現在もそのありようを維持し続けている理由を明らかにすることである。本書では特に、ゲームセンターに存在している多様な店舗形態に着目して変遷を分析する。

2 研究背景

 日本には遊園地、カラオケ、麻雀屋、パチンコ屋、映画館、競馬場など、娯楽を提供することを目的とする施設が現在も多様に存在する。このような、いわゆる娯楽施設の中には数十年、長いものでは戦前から存在し、日本の歴史の中で大きく変化して社会に根付いていった場所も少なくはない。例えばパチンコ屋は戦前に日本に現れ、戦後全国的な流行を経て国内に広がったものの、様々な理由によって法規制を含む社会統制を受けることとなった。しかし、その後の経営努力や自浄努力、そして「フィーバー機」などの新技術の導入により、パチンコ屋は法規制をいまだ受けながらも、現在日本社会に根付く娯楽施設となっている。
 他にも、ビリヤードとその関連施設は、戦前は賭博として扱われるなど様々な社会統制を被りながらも、業界側の努力や働きかけによって戦後法規制から外され、スポーツとして道を歩む形で社会に認められ、根付いた場所である。また、遊園地のように、大型の娯楽機器を主体とした娯楽施設として近代日本に生まれて以降、戦中の混乱で大きな打撃を受けつつもそれを乗り越え、戦後以降娯楽施設として大きく拡大していくことができた場所
もある。
 上記のように、日本国内の多くの娯楽施設は、日本国内に流入、あるいは誕生して以降、長い年月をかけて社会に根付いていった。このような多様な娯楽施設の中に、「ゲームセンター」という存在がある。

(中略)

 日本のゲームセンターは、1931年の日本における屋上遊園地の誕生から見ても90年近く、現在の形に近いゲームコーナーが作られた1960年代から見ても60年近い歴史を持つ娯楽施設である。
 ゲームセンターには、ゲーム機の収益を中心として経営を行う独立した店舗のみならず、異業種の施設の軒先、店内など様々な場所にゲーム機を設置し、その一角を小型のゲームコーナーという店舗形態として経営するという、大きな特色がある。例えば屋上遊園地は百貨店の屋上に併設した上で、百貨店に赴く客層に対応した娯楽機器によって作り上げた空間を提供している。他にも初期のゲームコーナーは映画館やボウリング場に併設して設置されることで、該当の娯楽を楽しむ人々の待ち時間など、隙間を埋める形で娯楽を提供していった。これは現在も継続している。
 過去には駄菓子屋や喫茶店、書店やレンタルビデオ店など、様々な場所にアーケードゲームが設置され、それぞれが店舗形態として成立する形でゲームコーナーを作り上げていた。現在はそもそもそういった場所は減ったものの、全国の家電量販店や様々な場所にアーケードゲーム機が新たに設置されている。
 また、ゲームセンターはこれまでの歴史の中で、様々な硬貨投入型の娯楽機器であるアーケードゲームを店舗に導入していった。このアーケードゲームの中には、様々な形で社会に影響を与えているものもある。例えば1970年代末の『スペースインベーダー』(タイトー 1978)を中心としたビデオゲームの流行は日本だけではなく世界的に日本のビデオゲームが影響を与えていくきっかけとなった。他にも、『ストリートファイターⅡ』(カプコン 1991)の流行をきっかけとしてゲームセンターから生まれた「対戦格闘ゲーム」は現在、「esports」と呼ばれる対戦ゲームを利用したスポーツの中で、主要ジャンルの一つとして扱われており、一定の市場規模と文化的・社会的影響力を持つ存在となっている。

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