ぼくがドラム式洗濯機を買わない2番目の理由
「ドラム式洗濯機買うと人生変わるよ」
どれだけの人からそう勧められただろうか。
ドラム式洗濯機の便利さに異を唱えるつもりはまったくないけど、ぼくは今のところドラム式洗濯機を買う予定はない。その2番目の理由は日々の生活に余白が欲しいから。
ぼくは普段、家から歩いて2,3分のところにあるコインランドリーを使っている。ランドリーマシンが10台ほどとテーブルとベンチ、それから自動販売機が1つある、どこにでもある簡素なコインランドリー。
週末になると洗濯物を一式手提げ袋に入れて、がさっとランドリーマシンに放り込む。小銭を入れてスイッチを押したら、40分くらいで洗濯が終わる。
40分。洗濯が終わるまでのこの時間がぼくにとっての生活の余白。
何をするかは決めていない。気持ちの良い朝は近くのカフェでコーヒーを飲み、雨が降る日は店内のベンチで本を読む。店内にはエアコンがないから、うだるような暑い夜はダラダラ汗を流しながら通り沿いに座り込んで缶ビールを飲んだ。
この40分くらいの時間がミソで、1時間あればきっと家に帰って何か用事を済ませてしまう。40分という帯に短し襷(たすき)に長しな時間が、ぼくに自由をくれる。
ドラム式洗濯機の時短によって生まれたアディショナルタイムは、きっとすぐに「織り込み済みの時間」として管理の対象になってしまう。
最近流行りのおしゃれなカフェが併設されたランドリーも同じことが言える。待つ間の行動を自分以外の誰かに規定され、管理されているように感じてしまうのだ。
中身はからっぽのまま、余白という外枠だけを大切に守る。そうすることで何か新しいことを始められたり、何もしない無為な時間を過ごせたり、たまに思いもよらない自分に出会えたりする。
無意識のうちに“やるべきこと”が流れ込んでくる日々の中で、“やるべきことをやらない”40分を確保する。そのための水門がぼくにとっては近所のコインランドリーなのです。
今日の1枚
これがそのコインランドリー。暇になったらこうやって適当にシャッターを切ったりして待っています。この日も暑かったなぁ。使ったフィルムはFUJICOLOR 業務用 400。