未来のファッションモール「アバターショーケース」を建築視点で見てみる
みなさん、FUKUKOZYです。
この度、バーチャライターとしてバーチャルマーケット4のワールド紹介の記事を書くことになりました。
来場者が会場に展示された3Dアバターや3Dモデルなどを自由に試着、鑑賞、購入できる、バーチャル空間最大のマーケットフェスティバルです。 バーチャルマーケットは、その開催を通じて「バーチャル空間を発展させ、豊かにする」ことを目指します。
バーチャルマーケット4のテーマは「パラリアルワールド」。物理世界とバーチャル世界を自由に行き来できるようになった世界はどのようなものになるのか。
今回は、アバターたちがショッピングする未来の風景の一端をいち早く見せてくれる「アバターショーケース」を紹介します。
これから始まるバーチャル時代。
「アバターをウィンドウショッピングで見て回る」ような世界が現実のものとなるかもしれません。
アバターショーケースは、そんな未来を先取りした「アバターが輝く世界」。
アバターやアバター向け衣装、アクセサリ等の展示を想定したショーケースが並ぶ近未来的なファッションモールです。
ここでは、未来のイメージを先取りした空間の参照として「ファッションモール」が引かれています。筆者のリアルアバターは建築関係の仕事をしておりますので、物理世界のモールも参照しつつ、紹介できればと思います。
「モール」=「吹き抜け」
早速ワールドに入ってみましょう。
会場に入ると3層吹き抜けの空間がどんと現れます。曲線を描く床が折り重なり、ゲーミング色(!)の印象的なライン状の照明に中央には巨大なオブジェが置かれています。
ショッピングモールと言えば吹き抜けですよね。物理世界のショッピングモールでも吹き抜けは空間的に一番の見せ所になっています。ただダイナミックさを提供できるだけでなく、吹き抜けは空間的な構成の分かりやすさやディスプレイしてあるものを目立たせる点でも非常に機能的なのです。
しかし、ただの吹き抜けとはいかないのが、バーチャル世界。
少し進んで床を見下ろすと...
なんとガラス張り。眼下には一面の雲海が広がっています。ここは空の上にあるショッピングモールなのでしょうか。
つまり、この吹き抜けは建物内だけではなく、外の風景(雲海)まで取り込もうとしているのです。それも当然でしょう。なぜならバーチャル世界にとっては建物の内外なんて関係なく、外の風景だって創造できるのですから。
また、ただの1枚ガラスではなくガラスタイルになっており、光が微妙に揺らいでいる細かい設えも素晴らしいです。
次は上から見下ろしてみましょう。
上から見下ろすと、1・2・3階の床のラインが上下で統一されていることが分かります。これはつまり、下に見える空も同列に扱うための工夫だと思われます。
このようなワールドクリエイターの細かな工夫が随所に伺えて、どう制作していったか思いを馳せるのも楽しいです。
さらによく見ていくと、一番上の天井は下の床より少しセットバックしています。これによって、1階から見上げると床だけが浮いているように見え、より空が広く見え、空間に広がりを与えています。
さまざまな工夫がなされていて、感嘆することばかりですが、あまり細かい部分だけ見ていてもよくないですね。
アバターショーケースの大きな特徴
続いてアバターショーケースの大きな特徴に触れていきましょう。
アバターショーケースの特徴は、会場内に専用ショーケースが用意されていることです。これにより、ブース作成まで必要なほかのワールド出展に比べて用意するものの負担が少ないので、はじめて出展する方でも出展しやすいワールドになっています。また、アバターだけを映えさせたい!という方にもうってつけの設えです。
ショーケースは吹き抜けを取り巻くように配置されており、それらを巡ってウインドウショッピングが楽しめます。
曲線を描く壁が奥へ奥へと進みたくなる気持ちを沸き立たせてくれます。
アメリカの代表的なショッピングモール「モール・オブ・アメリカ」の設計に携わり、日本のショッピングモールにも大きな影響を与えた建築家ジョン・ジャーディの基本的なデザインの手法も曲線を多用することでした(ジャーディは日本では六本木ヒルズや福岡のキャナルシティ、大阪のなんばパークスなどのデザインを手掛けています)。
近代建築の巨匠ル・コルビュジェが「人間の道は真っ直ぐな道である」言ったのに対しジャーディは「楽しい道は真っ直ぐではない」と言っていたそうです。ジャーディが目指していたのは街を歩くような「体験」で、それを実現するには直線だけでは単調になってしまい、難しい。
曲線を用いることによって歩く体験に複雑さを与えることができ、それが街を歩くような体験に近づき、「楽しさ」をもたらします。
たとえば、曲線の通路は視線が奥まで抜けず、逆に進んでみたくなる気持ちを湧き立たせる効果を持つのです。
吹き抜け越しにも向かい側のショーケース側が見え、どんどん回ってなってみたくなりますね。
ぎゅっと詰められたさまざまな居場所
疲れたら、休憩スペースも用意されています。窓の外には広大な空と謎の空中都市が見えますね。あそこには行くことができるのでしょうか...
こちらの休憩スペースにはなにやら端末が置かれています。
端末越しに外を見ると、なにやら別の建物へと続く通路が見えますね。
空中都市はよく見たら裏側にも建物が建っている...?重力が自由に扱える都市なのでしょうか。気になります。
気持ちのよい天窓がついた休憩スペースもあります。
このようにアバターショーケースが、吹き抜けを中心にした分かりやすい構成でありながら、さまざまなタイプの居場所がぎゅっと詰められています。
みなさんもこのワールドを訪れた折にはお気に入りの撮影アングルを探してみるのも面白いかもしれません。
さて、私の紹介はここまでです。いかがでしたでしょうか。
最期に余談ですが、レム・コールハースという20世紀後半を代表する建築家が関わった「ショッピング・ガイド」という本があります。
これはハーヴァード大学大学院の研究をまとめたもので、あらゆる「商業活動」が都市形成にいかに関わってきたかをさまざまな視点から検討したものです。
「はじめにショッピングありき」と語られるこの本、つまり現代の消費社会においてはまず「ショッピング」が存在し、それが私たちの生活の基盤をかたちづくる公共性を持つものになっている、と述べているのです。
そういう意味では、「パラリアルワールド」の未来の先取りをしたこのイベントが「マーケット」であり、そしてこのワールドも「ファッションモール」であることもとても興味深いことではないでしょうか。
このワールドは「アバターが輝く世界」というコンセプト上、ショーケース内にアバターが置かれたり、いろんなアバターが訪れた時にこそ、完成するのでしょう。そこに未来の生活の一端が垣間見えるのかもしれません。
バーチャルマーケット4の開催は4/29~5/10です。
みなさんもぜひ未来を体感しにきてください!
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