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ワールド探索日記 2022/9/25

Acro-Exhibition By sisidoakuro

Vtuberとして活動する宍戸あくろ氏のポートレイトやグラフィックなどの制作物を展示したワールド。

「夏にとける。」という展覧会名を体現するようなワールドが興味深かったです。大きくポスターが貼り出されたバス停から始まり、強い日差しが差す坂道を登っていくと、堤防と海。海に面して建つ美術館らしき建物に大きく吊られたポスターの色味を周囲の白さがより引き立てています(内部に入ってポスターを見ると裏側から透けて見えるようになっているの良いですね)。

内部に入ると、大きく白黒を基調にした展示空間に分けられ、その中で動きのある展示がなされていて見ごたえありました。写真を見る限り、もっと広いワールドなのかなと思っていたけど、良い意味でシンプルな構成で、写真から印象を受けた多様さは展示の妙なのだなと感じました。

Hypnosis Lobby - 睡神的回廊 By Jessien

UCLで建築を専攻しているらしい方の展示ワールド。
展示作品自体の読み込みはまだできてないのですが、有機的な形状の展示空間が目を引きました。

造形的には台中メトロポリタンハウスや

フレデリック・キースラーの「エンドレスハウス」を思い出しました。

https://getnews.jp/archives/1113196

台中メトロポリタンハウスでは、こうした三次元曲面空間を取り入れたのは「洞窟」的な感覚を建築の空間体験に取り入れることで、身体感覚への訴えを狙ったものでありました。台中メトロポリタンハウスの場合は独自のグリッドシステムにより空間のスケールの大小も決定されていましが、このワールドでは、一定サイズで空間が連続しています。という意味では、こうした有機的な構造体を意図した理由はどういうところにあるのでしょうか。
巡りながら、そんなことを考えました。

Gal⁄ery -08 By Yzha

バーチャルフォトグラファー柚葉さんが自身で撮影された写真を展示するワールド。

コートヤードを中心として展示空間が巡る空間構成ですが、抑制された色調や水の使い方等に妙が見えるワールドになっています。壁と床の取り合いなどは「リコレクション」を思い出しますね。床の目地が角にぴしっと合っているのに思わず目がいきました。

これらのワールドは作者の感性が惜しみなく入った「個人美術館」的なワールドだと言えますが、不特定多数の人の作品を展示する美術館だけではなく、特定の作品だけを展示する美術館も少なからず存在します。

こうした美術館は「特定の個人」を想定して設計がなされるため、総合的な?美術館とはまた違った装いが楽しめます。ただ現実のこうした美術館は(金銭的なことを考えると当たり前ですが)一定の評価をされた人のためにつくられるものです。
そう考えると、バーチャル空間では「特定の個人による展示空間」が当たり前のように存在し得るという状況は非常に興味深いです(「蛇ノ思考Art gallery 久住葉柄没後100年 企画展 By 月ノ宮みこおmikoo」というワールドは「架空の芸術家の為の個展」になっていて、そういうこともできるのは面白いですね)。

ただ現実にそうした空間がまったくないかというと、そうではありません。例えば三重県にある「私立大室美術館」は建築家の大室佑介氏が開設した個人美術館です(ただ先述した、「特定の個人のために設計」とは少し異なりますが)。

もともとは工場であった建築をほとんどそのまま残し展示空間にしており、「美術館」と考えるとユニークな空間になっています。大室氏はこのプロジェクトを発表した時の『新建築』の作品解説で

目的は地区内に散りばめられた小さな拠点を増殖・変型させるための起点をつくることであり、各拠点間に新たな秩序を見出し、作家と作品と建築とがせめぎ合い成長していく美術館群が地区の隙間を埋め尽くした時、地方圏の郊外地を舞台にした新たな光景と風景が生まれる。

『新建築』2016年12月号

と綴っています。つまり、大きな美術館をひとつ建てるのではなく、ユニークな空間の連なりによって、その地域の風景を更新していくということです。そのためには、ひとつひとつの空間がよりユニークさを持つ方が良いのでしょう。

そう考えると、バーチャル空間でも多くの「個人的な展示空間」が生まれている状況は、それらが連なったときに、また違った風景をもたらすことに繋がるのかもしれないと考えるとまだまだ面白そうなことは起きそうだなと思いました。

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