見出し画像

集合住宅雑感

集合住宅について触れるなら51C型まで遡らなければならない、さらに51C型とは西山夘三の食寝分離論や吉武泰水、鈴木成文の議論から繋がっていた。

公団の大量の住宅供給はnDK・nLDKという形式が生まれたから可能になった。その後、nDK・nLDKというキーワードは建て売り住宅やマンションなどに広がり、現在、当たり前のように住宅の大きさや部屋数を示すフォーマットとして使われている。

一方、こうしたnDK・nLDKという形式は現在の生活には適さないとして、建築家からは脱nLDKが唱えられ、様々な形式が提案された。

山本理顕の《熊本県保田窪団地》や《東雲キャナルコート》、妹島や高橋の《ハイタウン北方》など。しかし、果たしてこれらが一般的な形式として普及したのだろうか。いや、実情としては普及はしてはいない。

全国の駅前ではタワーマンションが今でも次々に建てられている。そして、それは相変わらずnDK・nLDKに則ったものだ。

では、そうした企業によって建てられるマンションなどはどうして受けいられているのだろうか。ひとつに、nDK・nLDKはわかりやすいからこそとてつもなく強力な形式だということ、もうひとつはそうした企業はnDK・nLDKという形式に手を加えるのではなく「イメージ」を使ってマンションなどの商品を売っていること。


「マンションポエム」

「イメージ」とはどういうことか?

写真家の大山顕氏は高級マンションのチラシに見られる売り文句の詩的さに注目した「マンションポエム」という概念・現象を明らかにした。

「マンションポエム」は典型的な「イメージ」の消費が、究極的に進んだ姿だ。「マンションポエム」を詳しく分析していくと、おそらくどういう土地に建っているだとかコンテクストに沿った細かい要素も出てくるのだろうが、基本的にはマンションはこうした「イメージ」を度々刷新しているだけで、本質的な形式には何の変化も起きていない。

それは、建築家の脱nLDKという問題意識とは裏腹に、一般の人はnLDKという形式には何ら疑問を抱いていないということでもあるのだろう。それが悪いのではなく、おそらくそれは意識すらされないほど「当たり前」の概念となっているのだからだろう。


nDK・nLDKとは大量供給のために必要とされた形式ではあったが、今の日本の少子化の状況を見ると、もはや大量供給は必要ではない。それどころか、数年後、数十年後には空き家率が20%以上にもなり、5軒に1軒は空き家という異常な状況となってしまうのだ。

こうした事態はニュースで取り上げられたりと色々な所で話題になっているので、ある程度は一般の人に認知されているだろう。

そうした状況でリノベーションなどの既存の建物に手を加えるという手法が出てきている。

みかんぐみの『団地再生計画』、ブルースタジオによる団地再生プロジェクトなど、これらのプロジェクトは団地やマンションに新しい視点をもたらすことによってnDK・nLDKを脱するのではなく、ハッキングする。

こうした手法は、日本のこれからの状況と相まって今後増加していくと思える。また、近年では「シェアハウス」という形式も普及してきており、こちらはリノベーションだけでなく新築としても登場している。「シェアハウス」という住み方自体が新しい形式と言えるので、それに適した新しいプランが生まれる可能性があるのかもしれない。

サポートして頂いたものは書籍購入などにあて,学びをアウトプットしていきたいと思います!