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XR空間を考える

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来たるべきパラレルリアルの世界へ向けて,XR空間について考える. 主として建築を参照しつつ新しく生まれつつある空間への思考を深化させるための断片記noteです.気になった方はまず…
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#読書

空間の配置,構造─『ゲームデザイナーのための空間設計 歴史的建造物から学ぶレベルデザイン』を読む3

他分野からの建築への視点を見てみよう,ということで読み始めたクリストファー・トッテンによる『ゲームデザイナーのための空間設計 歴史的建造物から学ぶレベルデザイン』. 今回は3章「基本的な空間配置とゲーム空間の種類」について触れていきます. 両者に共通する特徴の中でも特に重要になる「空間」について.その基本的な部分を簡単にさらっていきます. 現実とゲームの「空間」の違い両者には共通して私たち(プレイヤー)が息づく「空間」という基盤が存在していますが,その違いをきちんと理解す

建築の歴史とゲームの歴史─『ゲームデザイナーのための空間設計 歴史的建造物から学ぶレベルデザイン』を読む2

他分野からの建築への視点を見てみよう,ということで読み始めたクリストファー・トッテンによる『ゲームデザイナーのための空間設計 歴史的建造物から学ぶレベルデザイン』. 前回,なぜゲームのレベルデザインに建築の知識が応用できるのか簡単に触れました.ようやく今回から本題に入っていきます. 1章は「建造物からレベルデザインを学ぶ準備」. 建築とゲーム,双方の歴史を簡単にさらってその関係性を探っていきます. 建築と人間の関係ゲームのレベルデザインを考えるには建築の知識が参考になる

建築を通してレベルデザインを学ぶ─『ゲームデザイナーのための空間設計 歴史的建造物から学ぶレベルデザイン』を読む1

プレイヤーの感情をコントロールする、空間デザインの原理を学ぶ 名作と呼ばれてきたゲームタイトルには、プレイヤーが気が付かないうちにプレイ方法を教え、導き、のめり込ませる工夫が満ちています。 それらの工夫を実際のゲームタイトルから抽出した上で建築理論と融合させ、読者のゲーム開発に役立つ知識として提供します。 また、「ムービーが多すぎて集中できない」「次にどうしたらいいのかわからない」といった、プレイヤーが飽きてしまったり、ストレスを感じてしまう課題の解決にも、人が過ごす空間を研

『VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学』

◆心理学✕テクノロジー、仮想現実の最前線◆ ・VR内での体験を、脳は現実の出来事として扱ってしまう ・VR内で第三の腕を生やしたり、動物の身体に〝移転〟しても、脳はすぐさまその変化に適応し、新たな身体を使いこなす ・イラク戦争後、〝バーチャル・イラク〟を体験するVR療法により、PTSDに苦しんでいた二〇〇〇人以上の元兵士が回復した ・VRで一人称視点の暴力ゲームをプレイすると、相手が仮想人間だとわかっていても生々しい罪悪感を覚える ・仮想世界で一日過ごすと現実と非現実の違いが

世界の,意味の,想像の幅が広がること─『フラジャイル・コンセプト』

この写真は明らかにおかしい. まず,煉瓦の塊が浮いている(ように見える).これは明らかに重力に反している.下から上へ積まれて構造をつくり上げていくのが煉瓦造だが,その土台となる「下」が何もない. もうひとつ,ポツリと開けられたアーチ窓もおかしい.煉瓦造でアーチ窓をつくるためには煉瓦がアーチ状に積み上げられていなければいけない.にも関わらず,ここでは唐突としてアーチの開口が設けられている. じゃあ,なぜこのようなことが起きているのかというと,答えはこうだ. この建物

ゲームはなぜ面白いのか?──『ハーフリアル 虚実のあいだのビデオゲーム』

「ちょっとだけ!」と思って、ゲームをやり始めて気づいたら何時間も経っていたという経験がみなさんありませんでしょうか。 かく言う私も数年ぶりに本格的にゲームをやるためにPS4を昨年に購入しました。早速『ドラゴンクエスト11』をやり始めたら、2日でプレイ時間が20時間になっていた…なんてざまです。 なぜ、ゲームはこのように時間を忘れて人を熱中させる力を持っているのだろうか? そんな事をみなさんは考えた事がありますか。 そんな素朴な疑問を起点としてさまざまな学術的な研究とし