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「メディアの乗算」と「セキュリティの除算」

繋ぐべきAとBを繋ぐ「メディア」という分野を研究している私だけれど、「セキュリティ」の研究を始めた弟の話を聞いていると世の中には繋がってはいけないCとDもあることに気付かされる今日この頃だ。

・そもそも、メディアとは「Medium(媒介)」が語源であって何かと何かを繋げることを役割としている。メディア研究の第一人者マクルーハンによる解釈では、メディアはテレビや電話や書物と言った類いのものだけではなく、それら装置に含まれる電気音や電気光や活字もまたメディアであるとされている。

・つまり、メディアを大枠で捉えれば「何かと何かを繋げるもの」と解釈できる。デジタル領域に限らず、図書館や新幹線や愛妻弁当や居酒屋も「何かと何かを繋げている」メディアなのだ。空間としてのメディアはスペースメディアと呼んだりもする。

・逆に、「セキュリティ」とはどういう概念なのだろう。調べてみると「保安」という意味が適切とのことだった。人、住居、地域社会、国家、組織、資産などにおける安心や安全を保護するために害を排除する。一般的には、そういう意味として捉えていて、例に漏れず私もそう捉えている。

・セキュリティの語源を調べてみた。どうやら「セクーラ (sēcūra)」というラテン語から来ていると言われているらしく、この「セクーラ (sēcūra)」は、「セ(sē)」にはwithout、「クーラ(cūra)」には心配という意味があり、「セクーラ」は「心配がないこと」を意味している。

・つまり、「セキュリティ」が持つ意味には「心配をなくす」という概念が本質的に含まれている。メディアが「何かと何かを繋げる」中で、期待を代表としたポジティブな感情が生まれる一方で、もちろん心配を代表としたネガティブな感情にも巡り合ってしまうだろう。それを如何に排除するかが「セキュリティ」の分野に問われているのではないだろうか。

・メディアとセキュリティの関係性について考察している中で、「何かと何かを繋げること」を「メディアの乗算」と呼称するとしたら、「何かと何かを引き離すこと」を「セキュリティの除算」として呼称することで、相反するメディアとセキュリティの特性を整理できるのではないかと思い立った。

以下、2つの例を挙げて「メディアの乗算」と「セキュリティの除算」についての特性を整理していく。

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