見出し画像

ペットの保護責任を地域で考える

埼玉県東松山市にある #箭弓稲荷神社 の池に、15匹のコイを移す作業を手伝いました。
高齢のため飼いきれなくなり、飼っていただける方を探して欲しいという相談を受けてのものでした。
わたしが最初に相談したのは行政でしたが、生きものの受け入れは難しいという返事でした。
行政が管理する池は、たとえば公共施設に隣接して空調設備を水冷するための水を貯めておくためのものや、農業用水のため池であることが多く、それも仕方ありません。

次に相談したのはさいたま水族館でした。
水族館の学芸員さんに「そもそも、コイを移すことに問題はないのか」と電話で聞いたところ、「公共の水面からコイを釣ること自体に問題ないが、それを移動させることは県は条例で禁じられています」ということを教えてもらいました。
詳しく調べてみると、「コイヘルペスウイルス」というものが全国で確認されていて、埼玉県内でも平成15年に発生してから39件(令和3年3月現在)発生したことを受け、県内の河川や湖沼等においては、採捕したコイの、生きたままの持ち出し及びコイの持ち込みが、禁止されています。
なるほど、河川や湖沼、ため池など公共の場所へ移すことはそもそもできないのですね。
どうやら、私的な場所への移動は問題なしと解釈できるので、知人数人に相談してみました。
池を持っていて、コイを飼って下さる方を知りませんか、と。

庭に池がある家庭は知り合いにおらず、わたしの知人は「箭弓稲荷神社には広い池があって、数匹のコイが泳いでいるから、一度聞いてみては」と教えてくれました。
ダメでもともとと思って、箭弓稲荷神社に連絡もせずに伺って、尋ねてみました。
対応してくださった神職の方に、わたしはこう説明しました。
「社会が高齢化するなかで、空き家が増えていますが、飼えないペットという問題も増えており、この方も同じようにお困りです。箭弓稲荷神社さんも受け入れてくださらず、どこも受け入れ先が見つからなければ、コイを安楽死させることも考えなければなりません。コイを受け入れていただくことはできますか」。
神職の方も、境内の庭木と池の管理をされている庭師の方も、それはそれはとても優しく、しばらく考えてくださって、こうおっしゃいました。「お困りの方がおられるなら、こちらでコイを受け入れましょう。ただ、広い池には時折カラスや鵜も飛来して、魚類をついばんでいる様子が見掛けられますので、もしかすると存分に一生を永らえることができないかもしれないことはご承知おきください」というご返事でした。
なんて有難い!

早速、日程を調整し、相談者の息子さんとご近所さん、わが家の小学生の息子も「コイ見たさ」に手伝いまして、あっという間にコイ15匹をご自宅の池から箭弓稲荷神社の池へ移し終えることができました。
悠々と泳ぐコイを、東松山市周辺にお住まいの皆様には、箭弓稲荷神社へご参拝の折に是非見ていただければと思います。

養鯉業を営んでおられる方に尋ねていたら、また別の方法があったのかもしれませんが、コイが天寿を全うできる場所が見つかったようで、ご家族も安心しておられます。

最後になりますが、こうしてSNSに書くことで、「箭弓稲荷神社さんは生き物を受けいれてくださる」ということだけが拡散されることはちょっと違うのかなと思います。
ペットの保護責任という課題や、地域で神社仏閣が果たす役割、そもそもわたしが地域の課題にこのような形で関わることの是非など、違和感を覚える方がいらっしゃるかもしれません。
そしてさらに、これにて一件落着とならないのが現代の社会課題の根深いところです。
でも、何はさておき、生きている者同士が支え合わなきゃと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?