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図書館のお仕事紹介(8)蔵書点検

蔵書点検(以下蔵点)は、以前ご紹介した除籍と同様「やらないとまずいし、かなりの労力もかかるが、やってもほめられるわけではない仕事」の典型と言えます。
具体的に何をするかというと「館内にある資料のバーコードをスキャンして、正しい場所にあるか確認する」という作業です。

蔵点は体力勝負です

なにしろ点検対象が数万件、下手をすれば数十万件になります。
普通のお店でも「棚卸」というかたちで在庫を確認するでしょうが、図書館では基本「売れて在庫から消える」ということがないため、点検対象が年々増加していく運命です。新しい図書館より歴史ある図書館のほうが蔵点がたいへんになる傾向もあります。

利用者目線では「なんだ蔵書点検で休館か。不便だな」というだけですが、そのころ館内ではスタッフが死闘を繰り広げています(たぶん)。

最先端の図書館では「本にICタグを埋めこんで棚ごと自動スキャン」という新兵器を導入していたりしますが、コスト的な問題もあり、なかなかすべての図書館でそうはいきません。結局一冊一冊棚から本を引きだしてバーコードを読み取る、という地道な作業が中心になります。
(もっと昔、まだ機械化される前の図書館では「目録カードを箱ごと持ってきて一枚ずつカードと本を照合する」という気の遠くなるような作業だったそうなので、それに比べればラクですが…)

私は「右手にスキャナーを持ち、左手で本を引きだしてスキャン」というやり方ですが、もう腕がガクガクになります。スタッフみんな「うう、肩が痛い…」「握力が…」などと呟きながらの作業です。
点検対象が5万件として、スタッフ10人がかりで当たってもひとり5千件です。利用者に不便をかけているので、あまりのんびりやっているわけにもいきません。大型の重い本もあるし、古い本は破損しないよう気をつけて作業しなければなりません。

蔵点の後始末

スキャンだけでいいかげんエネルギーを使い果たしていますが、蔵点としてはむしろここからが本番です。

スキャンで収集したデータをシステムに投入すると、リストが吐き出されます。要するに「有るはずのものが無い」「無いはずのものが有る」「場所が違う」などとシステムが判断したものが、エラーとして出てくるわけです。

これらエラーの種類ごとに原因を究明し、つぶしていかなければなりません。

「有るはずのものが無い」

これについては単なるスキャンミス(棚を飛ばしていたり、薄い本が挟まっているのを見落としていたり)も多いので、まずそれをつぶします。
それ以外は紛失の可能性があるので、とりあえずがんばって探します。
それでも見つからなければ「不在」という扱いになります。

「無いはずのものが有る」

たとえば過去にいくら探しても見つからなくてデータから削除した本がしれっと棚に戻っていたりします。
貸出中のはずの本が引っかかることもあります。これについては返却処理もれが疑われますが、まれに利用者がカウンターを通さず直接棚に戻してしまう例もあります。
あるいはぜんぜん関係ないよその図書館の本や、なんの装備もなく私物と思われる本が発見されることもあります。
またどう見ても図書館の蔵書でバーコードもあるのに、なぜかデータ登録されていないこともあります。

「場所が違う」

これについてはほぼ誤配架なので、本を正しい場所に戻します。
誤配架が発生するのは装備上の問題(禁帯出本なのに「禁帯」シールがはがれているとか)も多いので、それもチェックします。
逆に「本は正しい場所にあるが、データの所在コードが違っている」というパターンもあり、これはデータを修正します。

蔵点が役に立つこと

これだけ苦労して蔵点した結果、紛失だの返却もれだの未登録だの誤配架だの入力ミスだの、管理上の不行き届きがぞろぞろ発覚するわけで、あまり楽しいことではありません(それを突き止めるために蔵点しているので、発覚しないと困りますが)。

それでも定期的にきちんと蔵点が入り、その結果がデータに反映されることで、確実に日々の業務の質は良くなります。

たとえば紛失した本がデータ上有ることになってしまっていると、利用者から「この本あるはずなのに見つからない」という問い合わせが殺到し、カウンター担当者が対応に追われますが、蔵点が入っていれば「この本は前回の蔵点時にあったかなかったか」がわかるので、捜索の手掛かりになります。

「データと現実は一致していなければいけない」というのは図書館の基本ですが、放っておくと現実のほうがどんどんデータから乖離してしまうので、両者を定期的に整合させる、というのが蔵点の一番の効果です。


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