「働きながら生きのびるための自炊」でやめた調理法とおすすめ調理法
・基本的にフルタイムで働きながら平日の夕食を自炊せねばならず、
・なおかつあまり食費はかけられないけれどなるべく既製品も使わず、
・それなりにおいしいものも食べたいし、
・タンパク質と野菜をバランスよく摂って健康も維持したい、
という前提で役に立つ調理テクニックを考えてみました。
1.包まない、巻かない、詰めない
「餃子くらい手作りしろ」みたいな発言がネット上で炎上していることがよくありますが、どう考えても餃子は家庭で日常的に手作りするべきメニューではありません。
餃子に限らず焼売や春巻きなど包む系の料理全般に言えることですが、あれはお店であらかじめ大量に包むところまで仕込んでおき、お客さんが来たら人数分だけ加熱調理するだけですぐ出せるところに意義があるのであって、二、三人の家族分を平日の夕食前にいちいち作るのは合理的ではありません。むしろ休日に家族総出で作るものではないでしょうか。「あとは焼くだけ」の状態まで準備しておけて、お客さんが一個ずつつまんで食べられるという点では、ホームパーティメニューとしてはいいかもしれません。
「ロールキャベツ」や「稲荷寿司」も同様です。キャベツとひき肉があるなら後述のおすすめな調理法があります。私は夏場に「お稲荷さん弁当」を作ることはあるのですが、あらかじめひと口大に切った油揚げを甘辛く煮ておいて、弁当箱に酢飯を詰めた上に並べるだけです。劇的に楽ですし食べやすいのでおすすめです。
2、揚げない
これは実践している人も多いと思いますが、「揚げ物をしない」と決めるだけで「台所汚れる問題」「残った揚げ油どうするか問題」「油の臭いが家に充満する問題」などがすべて解決です。もちろん一家全員揚げ物大好きで毎日食べる、というならあえてやめる必要はないでしょうが、そうでないなら「揚げ物は外で食べるもの」と割り切ってもいいのではないでしょうか。外食や市販のお弁当は揚げ物が多くなりがちなので、家でまで食べなくても…ということもあります。
どうしても揚げたいときは、フライパンに多めの油で「揚げ焼き」する手があります。片栗粉をまぶして揚げ焼きにした魚を酢醤油ダレに漬けた南蛮漬けや、一口カツの衣に粉チーズを混ぜて多めのオリーブオイルとバターで焼いたイタリア風カツレツなどもおいしいです。
揚げ物をしないと油が少ししか要らないので、そのぶん上質な油が買える、というメリットもあります。
3、和えない
和え物というのは意外と手間なうえ、メインにもならず、和えるためのボウルなどの洗い物が増えます。また時間がたつと色が悪くなったり水気が出たりで、作り置きにも向きません。
そのため「ゆでただけ」「切っただけ」の野菜を用意して、食べる人に自分で調味してもらいます。ごま和えなら「ゆでただけほうれん草」に自分でごまとかつお節と醤油をかけます。サラダも「切っただけ野菜」に好きな調味料をかけるだけです。食卓に塩コショウ・オリーブオイル・マヨネーズ・ごま油・ポン酢などの「セルフ調味料バー」を用意しても楽しいですし、食べる人に味付けに参加してもらうことで「作る人」と「食べるだけの人」という分断を避ける効果もあります。
4、汁物を作らない
「一汁一菜」的発想で「具だくさんの汁物をメインにする」という方法がありますが、実際やってみるとあまり楽ではないな、という印象です。「鍋で水を沸騰させ具材に火を通すためには予想以上に時間と火力が要る」というのがその理由です。また液体を含むぶん大鍋が必要ですし、残ってしまった場合も容量がかさばるので冷蔵庫内で場所をとります。
世の中にはどうしても汁物がないと気が済まない人もいるので、その場合はお椀で一人分だけ汁物をつくってはどうでしょう。
・【例1】味噌+かつお節+カットわかめ+熱湯=わかめの味噌汁
・【例2】ちぎった焼海苔+白だし+熱湯=海苔の吸い物
味噌汁などは温めかえすたびに味が落ちるので、お椀で一杯ずつ作ったほうが風味も良いです。
5、【おすすめ1】蒸らし炒めにする
炒め物というのは手っ取り早く見えて意外と厄介です。事前に食材の下ごしらえを全部済ませておく必要があり、調理を始めたら最後ノンストップで完成させなければなりません。やはりこれはまとめて仕込んだ食材と強い火力と油ならしをした中華鍋と鍋を振る腕力が揃った飲食店向き調理法と言えます。
ところがこれを「蒸らし炒め」にすると一気に楽になります。
要するに「食材を切る→軽く炒める→蓋をして食材自身の水分で蒸す」という調理法です。無水調理用の厚手鍋が最適ですが、フッ素加工の蓋つきフライパンでも充分です。水気が少なくて不安ならちょっとだけ水を足すか、日本酒やワインをちょろっと入れます。
例えば鶏の小間切れと玉ねぎとアスパラで作るなら、「玉ねぎを切る→鍋に少量の油をひいて軽く炒める→蓋をして弱火で蒸らす→鶏肉を出して塩コショウ→鶏を鍋に追加して炒める→蓋をして弱火で蒸らす→アスパラを洗って切る→アスパラを鍋に追加して炒める→蓋をして弱火で蒸らす→アスパラに火が通れば完成」という流れです。
【例1】カジキマグロ(角切り)+ニンニク+パプリカ
【例2】長ネギ+牛肉+焼き豆腐+酒&砂糖&醤油
【例3】玉ねぎ+キャベツ+豚バラ+食べるときにポン酢
【メリット】
・食材に制約がない。たまたま冷蔵庫にあるもの、安かったもの、食べたくなったものを自由に入れればよいのです。これが餃子ならニラが高くても古くても買わなければいけなかったり、餃子の皮が売切れならスーパーをはしごするはめになりますが、そういったロスがありません。味付けも自由なので、あえて言えば肉や魚介には強めに塩コショウするのがコツですが、あとはあるものを適当に入れるか、何なら例によって食べるときに自分でポン酢などをかけるだけでも大丈夫です。
・失敗しない。火の通りにくいものから先に加熱しているあいだに次の食材を準備すればよく、切ったはしから鍋に放りこむのでまな板があふれることもなく、炒め物でありがちな「焦げているのに中は生」とか「加熱しすぎで水気が出てびしゃびしゃ」みたいな失敗がありません。そもそも「こうあるべき」という理想形がないので、水気が出ても食材のうまみをスープやソースとして楽しめます。また調理中電話が来た、子どもが泣き出した、などの邪魔が入っても、蓋をして火を止めておけば余熱で加熱が進みます。
・水を入れずに蒸すことで食材のうまみや栄養が逃げない。同じ野菜でもこの方法で蒸すとびっくりするほど味が濃くなります。また肉のエキスが野菜にしみこむので、出汁も要りません。
・お店と競合しない。餃子だのクリームコロッケだのビーフシチューだのといったメニューは頑張って作っても「お店のほうがうまい」となったり、成功したらしたで「まるでお店みたい!」という評価になりがちですが、「蒸らし炒め」などという料理を出すお店はまずないので、家でしか食べられません。「営利目的の料理」というそもそも畑違いのものと競争する不毛な努力をしなくて済みます。
6、【おすすめ2】重ね焼きにする
とくに魚料理でおすすめです。例として「生鮭とポテトのマヨネーズ焼き」をご紹介します。
・ジャガイモを5ミリ程度にスライス
・耐熱皿にオリーブオイルを塗る(切ったジャガイモで塗ると便利です)
・ジャガイモ、塩コショウ、鮭切身、塩コショウの順で重ね、マヨネーズをかける
・200度のオーブンで20分ほど焼く
オーブンが無い場合はトースターや魚焼きグリルでもできると思います(調理器具の性能によって加熱時間は異なります)。
この方法のメリットは何といっても「洗い物が耐熱皿1枚で済む」ところです。また魚の脂を野菜が吸うことで、栄養を無駄なく摂れるということもあります。
【例1】トマト+イワシ開き+ハーブソルト&パン粉
【例2】エリンギ+タラ切身+シュレッドチーズ
まとめ
平日の献立としては「蒸らし炒め or 重ね焼き」+「ゆでただけお浸し or 切っただけサラダ」+「必要に応じてセルフ汁物」という感じでしょうか。
もちろんこうしなければならないこともないので、私も休日で気が向いたときはもっと手の込んだものを作ることもあります(汁物を否定しておいてなんですが、やはりポトフとかシチューとか、大鍋で長時間煮込む系の料理はそれなりの楽しみもあるので…)。
日々の生活でこなしていく料理と、ヒマなとき趣味で作る料理は別物と考えれば、毎日がもっと楽になるのではないでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?