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翼のあるものは飛びたがる

よく求人広告で「誰にでもできる簡単なお仕事です♪」みたいなものがあって、見ると今働いている図書館より時給が良かったりします。
もちろん広告が大噓で、実際は超過酷な仕事、という可能性もありますが、仮に広告どおりだったとして、じゃあ転職しようか、とはなりません。
「誰にでもできる簡単な仕事」というのはかえって拷問じゃないかと思うからです。
むしろ「そこそこの知能が前提で、それなりの努力と研鑽が不可欠、まあまあ創意工夫も要求されるお仕事です♪」と言われたほうが安心して応募できる気がします。

そもそも、簡単な仕事というのは誰にでもできるものではありません。
単純作業を毎日、朝から晩まで、手を抜かず、ミスもなく、決して腐らず、心を病まず、粘り強く続けられる人というのは希少な人材であり、単純作業界のエリートと言ってもいいです。私にはできません。
(だからこそ「単純作業だから低賃金でいい」というのはとんでもない話です。敬意をもって遇されるべきです)

私が図書館で働いているのは、図書館が好きだからという以外に「頭を使いたい」ということがあります。
まあ私などはお世辞にも高性能とは言えないですが、私程度の頭脳であっても、活かせる仕事はそう多くないです。
ましてもっと優秀な人であれば、さらに限られてしまいます。
図書館に限らず、翻訳などの語学系や教育・研究系、臨床心理系などの仕事は「頭を使わせてもらう代償として低賃金や不安定雇用に甘んじている」人も多いのではないでしょうか。楽な仕事がしたいのではないのです。

それを贅沢だと思う人もいるでしょう。「選り好みしてないで、あきらめて転職すればいい」とはさんざん言われます。
ただこれは何もプライドや見栄のためではなく「翼のあるものは飛びたがる」からなのです。鳥が馬の代わりにならないようなものです。どちらが上、ということでもありません。

私もいつまでかはわかりませんが、もし幸運に恵まれてこの仕事が続けられるのであれば、だいぶ羽根も抜けてよれよれの翼ではありますが、精一杯羽ばたいて、飛べる高さまで飛んでみたいと思うのです。


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