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走るスパゲッティー

ある土曜日のこと。お昼過ぎにぼくはシアトルのパイクプレイス・マーケット (Pike Place Market) という場所にいた。パイクプレイスと言えばシアトルで最も有名な観光地だ。ここは魚市場で、お店の人が威勢の良い掛け声をかけながらサーモンを投げ合うという恒例の催し?を見ることが出来る。魚介類や果物がずらりと並んでいたりバラエティに富んだお土産屋さんが連なっていたりして観ていて飽きることがない。そうそう、そしてここにはスターバックスの第一号店があることでも知られている。

そう言えばスタバの店頭でコーヒーを頼むときに豆の種類を選ぶことがあると思う。そしてその豆の選択肢によく「パイクプレイス・ブレンド」というのがある。あの「パイクプレイス」というのはこの場所を指している (はず)。

ぼくはニューヨークにいる友人の元を訪れるにあたってお土産を買おうとしていた。考えたあげくシアトルの地元のワイン (地ワインとでも言うのかな?) でも買おうかなと思い立ち、パイクプレイスにある小洒落たワインショップへと向かっていた。

マーケットの広場には土曜ということもあって観光客や地元の人で溢れていた。その中をぼくはてくてくと歩いていく。



すると向こうからある男がなかなかのスピードでこちらに向かってきた。感じの良いミドルエイジの白人男性という感じの男だった。白いシャツに黒いパンツで髪型もパシッと決まっていた。例えていうならばユアン・マクレガーみたいな顔つきだった。

それだけならまだいい。でも信じられないことがあった。

よく見るとスパゲッティーを食べながら走っているのだ。あのオレンジ色のソースがパスタによく絡んだ、そして斜めにスライスしたソーセージや薄くカットしたピーマンやタマネギが混ぜ合わさった食べ物。そう、ナポリタン・スパゲッティーだ。白い紙で出来たプラスチックのケースに乗せられたそのナポリタンをこの男はほうばりながら走っているのだ。

下半身を見ると腰から下の両足はとても俊敏にかつ規則正しく前後しながら歩を進めている。かたや上半身に目を移すと冷たく無表情な顔の前でフォークをゆっくりとくるくる回しながら口の中へとスパゲッティーを丁寧に運んでいる。その二つが矛盾なく、いやなんならすこぶる矛盾がある様子で並行して進行していたのだ。

それはまるでスパゲッティーが走っているように見えた。

ぼくは思わず足を止めてその光景をまじまじと観てしまった。そしてこう思った。「ぜんぜんぼくはまだまだだな」と。日々忙しく仕事をしている気でいたけど、あそこまでは忙しくない。あんなにスパゲッティーを食べる時間も惜しんでどこかへと急いで向かなくちゃいけないほど、ぼくは時間には困っていない。まだまだぼくは頑張りが足りない。そう、つくづく思ったのだった。






…なんだこの話。こんなどうでもいいことを書きたくなるぐらい最近は目まぐるしく疲れていたということかもしれない(笑)。そんなわけで今日は自分にご褒美するとしよう。さて今夜は何を食べようかしら。

夜は別の顔になるパイクプレイス・マーケット

今日はそんなところですね。ほんとにどうでもいいことを書いてしまった。まあでもそんな日もあります。ネオンが怪しく光る、夜のパイクプレイスを散歩しながら。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!

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