J1 第9節 ベガルタ仙台 vs ヴィッセル神戸 試合感想

久しぶりの勝利のゲームであり、自分たちのことを嬉々として語りたいものの、ヴィッセル神戸についての前提を把握していないと話が進まないゲームでした。

チームの軸はアンドレス・イニエスタ。
元FCバルセロナ、スペイン代表で世界一になった正真正銘の勝者であり、プレーヤー個人としても最高のフットボーラーです。
年俸は約33億円と言われており、彼を軸としたチームを作るのは普通のことに思えます。

しかし、イニエスタはゲームを決定付けるプレーヤーではありません。
周りの選手をより高い次元へ導く選手ですが、1人で勝利を奪い取る選手ではないのです。

例えばアトレティコ・マドリーの監督であるディエゴ・シメオネは下記のようにコメントしています。

軸のフォワードを決めて最大限に活かす為に、どのようにプレーするかを決めています。

ゲームを決定付けるプレーヤーとしては、リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウド、動画中に出てきた、ラダメル・ファルカオやジエゴ・コスタ、そして昨年までヴィッセル神戸にも在籍したダビド・ビジャなどフォワードの選手が挙げられます。
サッカーは得点を奪って勝利を掴むスポーツですから、そういったフォワードのプレーヤーを軸にチームビルディングは主に行わるようです。
しかし、イニエスタは違います。

とはいえ、イニエスタを軸としてチームビルディングを行った結果として輝くプレーヤーたちもいます。
昨年まで在籍したダビド・ビジャや日本代表の古橋享吾です。
彼らはコンビネーションもありますし、何よりイニエスタの視野とキック技術から生まれるパス1本で発生するカウンターを確実に仕留められるプレーヤーです。

みなさんはヴィッセル神戸に対して、どんなイメージがありますか?

私は5枚の屈強なディフェンダーがボールを弾き返し、回収し、イニエスタのパスからの一撃必殺のカウンターを仕留めるチームという印象です。

仙台戦ではそういった、一撃必殺を仕留める、チームの軸にはしていないものの、結果として輝く、ゲームを決定付けるプレーヤーがいませんでした。
その為、1失点で済み、勝利することができたゲームだと思います。

ヴィッセル神戸の望みとしては、イニエスタを活かす為に1-4-3-3を使用したいと考えていると私は下記の2点から想像しています。

①チームの軸であるイニエスタが最も長くプレーしてきた、最も攻撃面で良さを発揮できるシステムであること
②年齢を重ね、90分フルに1シーズン戦うことが困難なイニエスタの守備を免除できる可能性があるシステムであること

攻撃面でのメリットは過去のFCバルセロナやスペイン代表の試合をみれば一目瞭然なので割愛しますが、守備面では1-4-4-2に可変することができることが大きなメリットと言えます。
1-4-4-2にすることで、イニエスタの守備を免除とまでは言えなくとも、強度を下げることが可能です。

ですが、ヴィッセル神戸には1-4-3-3をセットすることができません。

まず、神戸のボール保持の要の1人であるセルジ・サンペール。
ボールを持つ局面では圧倒的なアンカーのプレーヤーであるものの守備の強度がなく、4-4-2のディフェンシブハーフには向いていないと思います。
特に背走場面でのスプリントの速度、頻度の低さは厳しいものがあると思います。

そして何より決定的なウインガーの不在。
4-4-2のサイドハーフの守備をこなしながらも、切り替え時にはボールを運び、最終局面では相手を抜き去り、フィニッシュまで絡むという仕事をできるプレーヤーは少ないです。
少なくとも実績のある日本人プレーヤーはJ1上位が確保。
国外から探すとしても、外国籍が埋まっている神戸には選択肢がない状況。
更に言うなら補強費に余裕がない状況でもあります。

他にも細かな理由は多々あるのでしょうが、あまりヴィッセル神戸を見ていないし考えていないので分かりません。

そういった状況。
イニエスタに守備をさせずとも守り切り、かつサイドプレーヤーをセットすることができるシステム。
ここから生まれたのが3バック⇔5バック変換だと予想されます。

3バック ⇔ 5バック変換。
ウイングバックを置くことで攻撃時にはウイングバックにサイドプレーヤーとして振舞ってもらう。
守備時には、中盤の強度が足りなくても個人能力の高い5バックで弾き返すというシンプルな方法です。

よく言われる1-5-4-1での撤退守備はウェイトが重く、ボールを拾った後に前に出づらいという欠点に関しては、古橋がいる場合なら低い位置からボールを運びカウンターに局面を変化させられますし、それが難しくてもボールの扱いになれた選手たちでゆっくり後方からビルドアップすることが可能です。

とはいうものの守備は個人能力の高い5バックで弾き返すだけ。
5枚いる状況として戦うのか、ただの1ラインとして戦うのか。それ次第で守備強度は一気に変わります。
仙台は1ラインとして戦わせることを強いていました。

例えばクロス。

ウイングバックと1vs1を行い、ペナルティエリアに入れるだけだとしたら5枚との勝負です。
ですが真瀬のクロスのようにマイナス、もしくは横方向へのグラウンダークロスの場合なら、ただの1ラインと戦うことができます。
浜崎のシュート。西村のシュート。関口のシュート。
再現性のある。神戸の弱点を突いた良い攻撃だったと思います。

例えばビルドアップやポジティブトランジション。

ミッドフィルダー ディフェンダー間に浮いている関口や降りる長沢についていけない。
ディフェンスはラインを揃えることが優先として強く、人についていけないのは札幌戦でも同様でした。
こちらも再現性のある。神戸の弱点を突いた良い攻撃だったと思います。

どちらも、ヴィッセル神戸というチームをしっかり分析したからこそ行えたことだと思います。本当にいいプレーでした。

さて、本当であればできない。もしくはリスクを考えてやりたくないはずの1-4-3-3にシステム変更を行い、その後、試合を優位に進めたヴィッセル神戸についても書くべきですが、書きたくないのでざっくり書きます。

強度に関係なく人が捕まってしまうとビルドアップできないという課題は再確認させられたゲームだったように感じます。

また、苦手な時間帯があるのは明確だと感じます。
失点の大部分を占める前後半の飲水タイム以降。及び75分以降。
今回も失点しましたが、単純にゲーム展開も良くないです。

加えて、大量に枠を外してくれたから勝てたという事実は受け入れるべきだと思います。
特にプレッシャーをかけたから外したというのと、ノープレッシャーで相手が勝手に外したのは全く違うことで、今回は後者が何本かありました。

プレッシャーでいえば、クロッサーへの距離が遠く、ピンポイントクロスをあげられたことも何本かあり、失点の再現性も同じようにあったように感じます。

本当に勝ちや負け。つまりは試合でしか学べないことがあるのだとしたら、この辺りはそろそろ変わって欲しい部分です。
私個人の願いとしては、個人の経験、反省だとか、そういうあやふやなもので解決するのではなく、チームとして徹するルールとして詰めてほしいです。

以降、連戦が続き修正が難しい試合が続きますが、今節のように勝利を期待します。

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