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ベガルタ仙台 直近の試合と大分戦について

1.直近の調子

鹿島アントラーズに1-2で敗戦し、直近5試合は勝ち無し。
また、ホームで勝利無しのチームはベガルタ仙台のみと、厳しい戦いが続いています。
下図は、黄色が勝点、緑が得失点の3試合加重平均の線になっています。
システム変更もあり、失点が減ったことで一時調子を取り戻しつつあるかと思いましたが、数字上でも、また少しずつ落としているように私は感じています。

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図1 ベガルタ仙台 勝点 / 3試合加重移動平均得失点

不調の原因は多々あると思いますが、やはり負傷者の多さが目立ちます。
下図はJ1リーグ各チームの次節段階で負傷欠場が見込まれる選手数です。
・参考:Football LAB(https://www.football-lab.jp/

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図2 J1リーグ各チーム 負傷者数

ベガルタ仙台の負傷欠場見込み数5はリーグトップです。
また、他チームも負傷選手は一定いましたが、主力級が長期離脱していたチームはほとんどありませんでした。
木山監督は選手のできることから、戦いを変えることのできる監督ですから、負傷者が減り、選択肢が増えることを祈るばかりです。

2.勇気を持って受け入れる必要のある守備

今シーズンは失点が多いのが特徴的です。
1-4-1-2-3や1-4-2-3-1といったシステムを使って、監督のコントロールできる範囲で、うまく対応しようとしています。

基本的にどちらのシステムであったとしても、大外から縦に直進してくるようなチーム。多くはウイングバックを置くチームにはある程度の堅さを出せていると思います。
蜂須賀、柳、真瀬といった本職サイドバックの選手たちはクロッサーに対しての近い距離でプレーすること(=1vs1の守備)を嫌がりません。
ウイング / サイドハーフの選手たちの距離感は甘いことが多いですが、一般的に攻撃側のシュート成功率が低い選択肢です。このパターンで失点が多いと本格的に辛い(=例えば昨季前半のベガルタ仙台)ですが、シマオが復帰したこともあり、より堅くなるでしょう。

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図3 大外、縦からのクロス

ハーフスペースへ素直に入れてくれるチームに対してはセンターバックが対応する場面では、吉野や平岡は上手く対応できていると思います。
吉野に関しては、素直に取りに行き過ぎて、裏を取られることもありますが、これは許容すべきだと私は考えを改めました。
理由としては吉野のインターセプトなどのスタッツ。失敗は多々あるものの、チームとしてやりたいことを表現できていると思います。
チャレンジもせず(もしくはできず)に背中をとられるのはNGですが、今シーズン、降格がないことを考えると、経験させてもいい部分と考えます。

一方で、サイドバックが対応する場面では、ボールがロクにとれません。
例えばルヴァンやリーグのセレッソ、鹿島といった、サイドハーフが内に絞るチーム相手だと、本当にとれません。

これはサイドバックの選手自体の問題ではなく、サイドハーフ / ウイングのある程度の守備免除(=攻撃で広く深い位置へボールを届けたい為)、サボリ等が原因です。
現状、犠牲の割に得られる利益が少ないので、目先の勝利を狙うのなら、素直にサイドハーフらしい守備をしてほしいというのが本音です。

しかし、ベガルタ仙台の最大の長所になるであろうイサック・クエンカがチームに戻ってきた時には再び問題点になるのは容易に予想できます。
サイドハーフ / ウイングが戻ってこないのではなく、バックパスを切っている(=鹿島アントラーズ戦、ジャーメインが後方を切っていたが交わされた場面のように)と考え、ミッドフィルダーの選手たちが勇気を持ってボールと同じ高さに立ち、横パスを切り、狭い方へ追い込む。
最後はサイドバックが勇気を持って戦って勝つしかない、というのを受け入れなければ、大きなことは成し遂げられず、小さなこと(=ただのミス待ち)になってしまうでしょう。

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図4 ハーフスペースへの対処

ボールと同じ高さに立てないと、ピッチを横断されてしまいます。
ピッチを横断されると、守備者は身体の向き、視野を正しく保つことはできません。また、ディフェンスラインをキープしながら、横スライドと縦スライドを同時に行うことはできません。
一方、攻撃者は縦に加速することもできますし、あえて時間をかけて相手をスライドさせ、バックドアを狙うこともできます。
つまり、基本的に守備者には不利な状況しか生まれません。

この不利な状況を作らせないために、勇気を持ってボールと同じ高さに立つ必要があります。
簡単そうに書いていますが、勇気を持って、というところがポイントです。
パッと見、ゴールに近いスペースを埋める(あえて守るとは表現しません)のをやめて、高い位置をとるわけですから、勇気が必要です。

これができると狭い範囲で守備ができ、誘導の概念はより強くなり、よりクリーンに前線にボールを届けられます。
また、ボールがとれなくても相手にU字のパス回しを強いることができるのでスライド、ディフェンスのセットが間に合います。
1-4-3-3ではインサイドハーフが、1-4-2-3-1はオフェンシブハーフがボールの高さをとれるシステムですから、改善できるポイントと考えます。

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図5 高さがとれずピッチを横断され加速される図

下図はベガルタ仙台の右サイドからの崩しの局面です。

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図6 サイドからの崩しの局面

直近のベガルタ仙台の崩しの局面はサイドバックの柳の対人能力に頼ったサイド攻撃が多くを占めています。
ウイングに入る選手も、若干は内に絞る位置からスタートするものの、サイドプレーヤーなのでサイドへ流れることが多い(=平行の位置で受けて、ピッチを広げる。もしくは深く使うことはしない)です。
あくまでも同サイドを可能な限り広く使いたい。そして、相手のエリア内の人数を減らしてクロスに備えたいのだと思います。

ウイング、サイドバックの選手が高い位置をとるので、後方のサポート&ネガティブトランジションのカバーはディフェンシブハーブの選手がポジションをとります。
エリア内に3人は揃えたいというのがチームの決まりごととしてありそうなので、センターフォワード、逆ウイング、オフェンシブハーフの3人はエリア内で待機します。
ここまで配置すると、リバウンドポジションにはディフェンシブハーフ1枚しかおらず、被カウンターとなる場面が増えてきます。

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図7 被カウンター

ベガルタ仙台の被カウンターの対処は最終ラインから順に、セットディフェンスの配置に戻ることが最優先です。
最終ラインから順に埋めていくので、中央のディフェンシブハーフの周りのスペースが大きく空きます。
この状態は、一般的に危険だと言われているアンカー脇を突かれているのと同義です。アンカーの存在しない、1-4-2-3-1にしたとしても避けては通れない(=システムは数字の羅列と言われる典型)チームの弱点といえます。
この弱点も先ほど記載した通り、勇気を持って受け入れる必要のある守備です。

どうしてここまでネガティブトランジションの配置が悪いのかというと、ペナルティエリアのローポストに侵入する術がなく、大外からクロスを上げるしかないからです。
ローポストに侵入する術があるのなら、ローポスト侵入者を含む、フィニッシュトライアングルを形成する3人さえいれば最低限揃うので、あとの選手はネガティブトランジションに備えられます。

しかし、ローポストに侵入できない。大外からのクロスしかできないというなら、大外からのクロスの成功率は先述した通り、低いです。
少しでも確立をあげるためにエリア内に人数を割くというアグレッシブで攻撃的な判断をするなら、被カウンターを受けることは勇気を持って受け入れるしかないのです。

被カウンターを受け入れたとして、次に受け入れることは、最終ラインから配置を埋めるのを諦めることです。
最終ラインの人数が減るというのは、後方により多くのスペースが生まれることと同義ですから、守備者の心境としては怖いです。
しかし、中央のディフェンシブハーフの脇を埋められず、相手にチャレンジできないとズルズルと背走を続けてしまいます。
そして、崩しの局面で逆サイドに振られてしまえば、人数を揃えたはずなのに、1回の1vs1にすべてを賭けるしかなくなります。
ディレイとズルズルと背走するのは全く違います。ディレイする為に、勇気を持って一つ前の配置を埋め、相手の加速を止めることが重要になると考えます。

3.今節の対戦相手 大分トリニータ

昨季は片野坂監督の下、魅惑的なサッカーを魅せてくれました。
本も出るくらいですから、本当にすごいです。
今期は川崎フロンターレからストライカーの知念などを獲得し、藤本やオナイウの抜けた得点力を埋められるかが注目です。

今期は再開直後は好調でしたが5節から5連敗。
10節に勝利をあげ、引き分けも続いたことで少しずつ調子を取り戻したかのように見えましたが、結果的には5戦勝ち無し。
ベガルタ仙台同様、苦しむシーズンとなっています。

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図8 大分トリニータ 勝点 / 3試合加重移動平均得失点

大分トリニータはセットプレーからの失点が多くなっています。
ベガルタ仙台としては、直近の得点はセットプレーが増えていますから、突きたいポイントとなります。

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図9 ベガルタ仙台 得点 / 大分トリニータ 失点パターン

大分トリニータの得点はクロスが最も多くを占めています。
ベガルタ仙台もクロスからの失点は一定ありますが、根本原因としてはウイング / サイドハーフの選手がクロッサーに対応しなければいけない場面を作られていることがあげられます。
ウイングバックのシステムを使う大分トリニータはピッチを広く使うことが予想されますが、逆ウイングバックはゲームに直接は関与ができず、ボールサイドの人数が少ないとも言えます。
狭く攻め込ませてしまえば、単純にマイナス1とすることができますから、勇気を持ってボールの高さをキープすることが重要となるでしょう。

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図10 ベガルタ仙台 失点/ 大分トリニータ 得点パターン

ここまでは試合内容をみてきた感想を書いてきました。
こういった、試合内容についても、いつも思っていますが、それ以上にホームで勝ってほしいというシンプルな思いが圧倒的に強いです。
今季初のホームの勝利を楽しみにしています。

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