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青森県田子町産にんにく(第一回)


ほぼ1年かけて育てられるにんにく

青森県は、全国有数のにんにく産地。その中でも、田子町は、青森県のにんにくの町として1960年代から栽培を続け地域団体商標『たっこにんにく』を取得しています。田子町のにんにくは、田子町独自の寒暖差のある気候や山間地の土壌、生産者のこだわりによって、品質の高いにんにくが生産されています。
また田子町独自の新しい種苗たっこ一号(商標名:美六姫)も生まれ、新たな栽培法の確立を突き詰めています。

わたしはにんにく農家としておよそ7年ほどですが、その間のにんにくを育てる苦労や問題点・自分で販売することや今後についてなどを書いていこうと思います。一般的な慣行栽培をメインににんにくの栽培土づくりから施肥までの作業について第1回は書こうと思います。

にんにく栽培の一年

早春のにんにく

にんにくはほぼ一年を通じて栽培されています。9月下旬から6月下旬まで土の中にあり、作物の中でも長い期間畑に存在しています。畑で育っているということはその期間手をかけなければなりません。また、農業は毎年の土づくりが重要です。にんにくが植えられていない短い期間に土づくりをどのように行うかが実はにんにくを栽培するにあたり最も重要です。

1.7〜8月 土づくりと種こぼし


7月~9月上旬はにんにくが畑にいない短い期間。上記に記したようにこの期間の土づくりがとても大事です。他の野菜やにんにくの作業などが多く最も繁忙期ですが天候と時期を見て土を回復させていきます。理論的に見れば、植物は土から栄養を吸い根や茎を伸ばし。もちろんその多くは水分ですが、土から失われた栄養を補充しないといけません。今回土づくりは畑や状況により違い難しく、失敗を誘発することもあるので本当に一般的なことだけ説明します。
土づくりに使われる主な方法
①堆肥
一般的に牛糞堆肥・豚糞堆肥などを10aあたり1~2tほど散布します。堆肥は完熟が望ましいですが、半熟のものを散布せざるを得ない状況がほとんどです(完熟堆肥というのは実際には年数も手間ひまもかかります。市販されているものでも本当に完熟と呼べるものは少ないです)。そのためにんにくを掘り取りした後速やかに堆肥を散布し土と混和させます。ちなみに馬糞なども良いです。鶏糞は堆肥ではなくあれは肥料です。

牛糞堆肥散布の様子

②緑肥
にんにくの緑肥作物としてはソルゴーやチャガラシが使われることが多いです。どうしても動物性堆肥に比べ大きくなりにくい(要するに肥料としての要素が薄い)というのとすき込む手間があり、にんにく栽培には動物性の堆肥が好まれます。私は緑肥のほうが好きで慣行畑に使います。分解の感じで土の状態を見たり、土壌に沢山有機物を入れられるのと土壌の改良にも使えるので。また、堆肥散布のマニアスプレッダーが入れない場所でも可(田子町は山なのでそういう場所多いです。豚糞堆肥ならペレットを使う手もありますが)。
※正直、微生物の分解だったり土壌の安定には実はこの期間では不可能です。そのため、有機栽培する畑は一年を通して分解・土づくりをしながら栽培しています。ただそれだけでは反収が小さくなるのと種を作るのに困難なので慣行の栽培も行っています。にんにくは強いようで致命的な土壌病害虫があります。言葉では語れないほどとても恐ろしい土壌病害虫です。それはまた別の記事に書こうと思います。
③有機JAS畑の場合(私独自。マネしても責任とりません
ざっくりとだけ話すと、10aあたり1tの米ぬかと150kgの油かすと300kgの米ぬか(畑の状況でそれぞれの量は変動します)を散布します。その後毎週のようにトラクターで切り返します。あまり大きな声では話せない方法です。そんなのでにんにく作れるのか? と言われそうですが2Lとか畑とにんにくに負担をかけるサイズを作る気がない畑なのでMサイズがレギュラーサイズになるようにやってます。その他細かい技術的なものはありますが企業秘密ってことで省かせてください。ちなみにですが、でっかいにんにく2Lは有機栽培では無理ゲーだと思ってください。しっかり化成肥料入れないと継続できません。にんにくが有機栽培では難しい理由の一つです。

緑肥:チャガラシ


種こぼし
種こぼし、種割りと呼んでいます。実際にこの作業がなければどれだけにんにく栽培が楽になるのでしょう。10a当たり約15000のにんにくの粒が必要です。えんえんとひと夏かかります(汗)。大体1球で4片(4粒)植え付けに使える感じです。細すぎるものや下記の写真のような弾くものが続々と出てきます。そして病害虫の影響を受けていないにんにくが大前提。実は種の選別がにんにく栽培の命運を決します。

種こぼしで弾いたもの。作業による傷、おんぶ、多出芽の要因のあるりんぺんたち

2.9〜10月 元肥の施肥と植え付け

施肥
当たり前ですが、肥料というのは多すぎても少なすぎてもだめです。そして畑と植物によって必要量が異なります。野菜を作るときは必要な栄養のストライクゾーンを見極め適切な時期に施肥を行う必要があります。
まずはにんにくの元肥として主に必須なものだけ畑に入れる順に書きます
①苦土石灰ーPHの調整(大体6.5位にしたい)カルシウムとマグネシウムの補給。カルシウムは植物にとって細胞壁を作るために必要です。丈夫な茎葉に必要です。マグネシウムは葉緑素を作ります。光合成のために必要です。
にんにくの植え付けを行います。にんにくは、10月から11月にかけて発芽します。青森での施肥時期は植え付け時期にもよりますが、大体1か月前には施肥します。
②ゼオライトー植え付け前なら特に時期を選びません&必ずしも必要ではありません。が、施肥した肥料を効果的に植物に吸収してもらいたいなら一般的な3要素の肥料を増やすよりゼオライトのほうが良いと思います。国産のゼオライトがオススメです。
③3要素の肥料。ホームセンターなどで8ー8ー8とか14ー14ー14などの3つの文字が大きく表記されたものです。左から窒素(N)ーリン酸(P)ーカリ(カリウム K)という一般的に三大要素と呼ばれるもの。窒素は葉肥えと呼ばれ植物の体を作ります。この栄養が無いと植物は育ちません。窒素は人間にとって炭水化物みたいなものであればあるだけ吸収しメタボになり病気がちになります。適正な量を施肥します。にんにくの場合10a当たり20~25kgです。そうするとホームセンターの14-14-14だと20×0.14=2.8kgですので8~9体くらいです。大玉を取る六戸辺りですと30kgくらい入れるようです。基本リン酸・カリも一緒に入っています。窒素よりも過剰による弊害は少ないので窒素を基準に選んでよいと思います(植物に吸収されない栄養が土壌に残る問題はありますが)。
農協でにんにく専用肥料があります。土壌診断して専用肥料を使うのが良いですが、コストはかなりかかります。その他ようりんとかもありますが、これも畑の状況によるかと思います。
その他鉄分や亜鉛・マンガン・ホウ素など微量要素もあります、ありますが、畑や植物によって量違いますのであまり難しく考えても答えは出ないでしょう。これらは一般的に植物に欠乏症が出る場合は追肥(葉面散布)で対処することが多い栄養素です。また、にんにくの場合は割と素直に土壌にある栄養素を吸い上げるような気がします。亜鉛が多いと亜鉛が多めになったりとか。個人的には亜鉛もそうですが、もっとアスパラギン酸と糖度の高いにんにくを作れるようになりたいですね。これを狙って作れたら超人でしょうきっと。。。

植え付けは次回にします。最後に

これだけでかなり長くなりましたので第2回に回します。にんにくは栽培コストが高いです。反収が良いように一般的に言われますが、それは大嘘だと思っています。手間とコストが割りに合わないことが多いです。年に1回の収穫。失敗したらアウト。市場の値段も2~3年周期または年毎の乱高下ですから辛い年はずっと辛い。特に何年もやるときには生産コスト絶対上がります。販売価格をしっかり気を付けないと後で困る作物だと思います。それについては気が向いたら書きますね。次は第2回で。
ふくふくファーム 沢森

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