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パリ五輪開会式直前の鉄道破壊

フランスはかつて統治されたナチスドイツと戦うレジスタンスが鉄道破壊を作戦として多用しており、このような攻撃は決して珍しい現象ではない。
また、戦後の日本でも左翼ゲリラによる破壊行為には、こうした交通機関ライフラインとしての鉄道破壊が採用されてきた。私自身は危機管理学研究者として、こうした交通機関ライフラインへの破壊を「ロジスティクス・テロ」「ライフライン・テロ」と昔命名して警鐘を鳴らしてきた。
抵抗、左翼、ゲリラの手法として定着している鉄道破壊だけに、なぜこのようなパリ五輪開会式直前に主要なTGV路線を3カ所も破壊を許したか、フランス政府、警察にとっては手痛い失策だろう。
しかしながら、パリ五輪の試合会場周辺は武装した警察・軍隊による厳戒な警備態勢が敷かれ、監視カメラや手荷物検査などにより、試合会場周辺、パリ市内でテロ事件を起こすのは困難な状況にある。だからこそ、このようにパリから遠く離れた、監視が弱い地域でしかテロ攻撃は成功しない。
3ヶ所が同時多発であるため、複数犯のグループによる犯行だと考えられるため、ローンオフェンダーではないだろう。しかしホームグロウンかどうかはまだわからない。フランス人かもしれないし、五輪観光客を装った外国人かもしれない。動機も政治的テロなら、①独立運動、②宗教、③階級闘争、④シングルイシュー(環境運動、動物愛護、反グローバリズム)など多様な動機がありうるが、それも現段階ではわからない。
これで、フランス政府、警察は鉄道網など交通ライフラインの監視、警備強化をさらに徹底することになるが、さらにそこから漏れる周辺領域が攻撃の対象としていくらでも残っている。パリ五輪の間、まだまだテロリズムは起きうるし、対策が継続される。
(※この記事は朝日新聞デジタルのコメントプラスで日本大学危機管理学部・福田充研究室が投稿したコメントを転載、再掲したものです。)

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