副交感神経によろしく
夫が風邪をひきはじめて2週間になる。
高熱こそ出ないものの咳は止まらない。
病院には2回かかっているのに。
今日は土曜日。
昨日の夜に比べて症状が穏やかに見えたので、「体調どう?ましになった?」と訊ねると「いやぁ、昼間はあんまり咳が出ないんだよ、夜がなぁ…それで調べてみたんだけど、」と夫が言う。
すかさず私は「副交感神経でしょ?」と返した。
会話をクイズゲームのように捉えて、相手の言葉を奪ってしまうのは私の悪い癖だ。
夫は私のそんな悪癖を気にする様子もない。
夫は「そうそう、だから仕事中はいいんだけど…」と言ったあと、一息置いて、うっすら口角をあげ、笑顔なのか困惑なのかよくわからないふにゃふにゃした表情で斜め下に目線をやったと思うと、最後にははにかんで「家に帰ってきたらリラックスしてるってことみたいだわ」と言葉を締め括った。
気恥ずかしいことを気恥ずかしそうに伝えられる夫は誠実だと思う。
「仕事中よりも家にいる方が落ち着く」というのは、よっぽど険悪でない限り、どんな家庭でもそうだと思う。家ってそういうもんだ。
だけど、一緒に住んでいる人から直接伝えられると、その言葉は初々しい告白のような効力を発揮してくる。
□
夕飯は夫に作ってもらうことにした。
一人暮らし時代からほとんど料理をしてこなかったと言うわりには、きちんとレシピ通りに手順を重ねていて、手際が良い。
過去に私がパンケーキを焼いたとき、真っ黒に焦がしてしまったので2回目は夫にお願いしたことがあるが、その時もちょうどいい焼き加減を見計ってパンケーキをひっくり返していた記憶がある。
普段はやらないだけで、やったらできる人っているよなぁ〜…
仕事も家事も人間関係も「やってはいるけど得意でもない、むしろ"できない"と開き直りたい」くらいのラインで日々を送っている私としては羨ましい限りだ。
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