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本屋さんが倒れるのは嫌だから。第1回どくラジ部キャスト

(トップ画は、Bookstore AID公式Twitterよりダウンロードさせていただきました)

2020年5月、およそ半年ぶりにどくラジ部再始動!

今年の配信第1回は、本屋を助けるプロジェクト『Bookstore AID基金』を特集しました。

これは、書店員さんなど本に関わる仕事をしている方々が、4月に立ち上げたクラウドファンディングです。

基金の概要や詳細は、配信のアーカイブ(前半)や、他の様々な媒体にお任せするとして...

ここには、事務局のメンバーであるfuzkue店主・阿久津隆さんをお招きした座談会のテキスト版を掲載します。

◆どの本屋が倒れるのも嫌だ

(実施日・5月15日)

ふっかー:まず、Bookstore AID設立の経緯と、込めた想いについて聞かせていただけますか。

阿久津さん:身近な書店をやっている人と話し、(新型コロナで)思った以上にピンチであると実感しました。

「何か自分にできることはないだろうか」「でも1人でできることは限られているよな」と考えている時に、ミニシアターエイドがお金を沢山集めている状況を聞きました。

(書店のためにも)もしこれだけお金を集めることができたら、何か意味があるんじゃないかと。そんな想いをTwitterに書いてみたところ、事が動き出したという感じです。

ふっかー:開始から2週間ほど経ちましたが、その想いが伝わっているという手応えはありますか。

阿久津さん:そうですね。具体的に、今現在2400名(5月15日時点)ぐらいの方がコレクター(支援者)として参加してくださり、また300名前後の方が、賛同人として色んなメッセージを寄せてくださっています。

そういった方々の思いの丈を読んでいると、「この人たちには伝わった」と感じます。

ふっかー:それでは、より多くの方を巻き込むために、途中で軌道修正した点などはあったのでしょうか。

阿久津さん:僕が思いつきでツイートをしたのが、確か4月の18日頃でした。そこから1週間で4人の運営チームができ、さらに1週間でクラウドファンディング(以下、CF)を始め、そして2週間が経ったわけですけれど。

特にCFが始まるまでは、凄い限られた時間(での準備)でした。

毎日8時からミーティングがあって、ずーっと議論していました。その時点で寄せられていたリアクションも参考にさせてもらいながら、ずっとブラッシュアップを続けていましたね。

その中で、沢山の方の支援をいただくために、知っていただくために、色んなことをやっていこうとは話していたんですけど。

でも「最初の最初」の想いというのは「これ(新型コロナ)で倒れる本屋さんが出てきたら嫌だな」なので、そこは一切ブレずに、ここまでやれてるんじゃないかなとは思ってます。

◆「べき論」は手に負えない

ふっかー:基金を始めた後、fuzkueのお客さんから反響はありましたか。

阿久津さん:ほぼ休業中なので、お客さんと話す機会はなかったですね。もしかしたら「何やってるんだろう」という人もいるかもしれないですけど...

まふぃさん:でもTwitterでは「#自宅フヅクエ(お店のアカウントで呼びかけたハッシュタグ企画)開いてる人、めっちゃ多いですよね。

阿久津さん:そうですね。凄い沢山の方が毎日参加してくださっています。僕にとっても、お店が開けられない中でそれを見られるのがありがたくて、安らぐ時間になっているところがあります。

ふっかー:阿久津さん自身も本を書かれていますが、書店さんとの関わりで、何か嬉しかったことがあればお聞きしたいです。

阿久津さん:もちろん、自分の本が出た時に本屋さんに行って、並んでいるのを見かけるのは凄く嬉しかったですし...

今、3月に出た『読書の日記』とは別に、6月の刊行に向けて本を書いているのですが、それが「本屋さんが開いていない」状況で出るというのは、ちょっと想像がつかないですね。

やっぱり本は本屋さんという場所にないと、「出しても仕方がない」とまでは言いませんが、「出した実感が得られない」というのは、僕以外にも多くの人が思っているんじゃないでしょうか。

ふっかー:阿久津さんの新刊のタイトルは『本の読める場所を求めて』ですが、その前にはやはり「本と出会う場所」があって、それは当たり前じゃないんだなと思わされますね。

今の状況を受けて、そういった場所が失われてしまうかもしれない、という危機感もありますよね?

阿久津さん:うーん、僕はこれに関しては「危機感」ではないですね。それよりも「嫌だ」という気持ちです。

僕個人の意見ですが、危機感とか、街に書店があるべきだとか、「べき」の話は手に負えなくって...(なくなるのが)嫌だから、何かアクションをとりたいってことですね。

ふっかー:正しいか正しくないかよりも、「あってほしい」という気持ちなんですね。

阿久津さん:そうですね。あってほしいというか、ある街で暮らしたい。今、支援してくださっている2000人以上の方も同じ気持ちなんじゃないかと。

もし、「自分なりに(助けたい)」と思っている方がいて、その形としてBookstore AID基金が妥当だと思っていただけたら、支援していただきたいという感覚です。

まふぃさん:「べき」の根っこにあるのも「嫌だ」という気持ちで、また「嫌だ」にも色んな種類があるんだと思います。

「行く場所がなくなる」「店主に会えなくなる」「雰囲気が好き」「選書が好き」...全部をかき集めたら、行き着くのは「本と本屋が好き」っていうところなんだと思いました。

個人の肌感覚ですが、「べき」では人は動かない。最終的には「なくなったら嫌だ」「好き」が一番なのかなと思います。

◆発信も支援になる

ふっかー:私もその「嫌だ」という想いに賛同して、少額ながら寄付しました。

しかし、読書好きな方の中には「CFに参加したことがない」「寄付するか迷っている」という方がいると思います。あるいは、「もう寄付したけれど、他にできることはないか」という方もいるかもしれません。

そんな方々が、寄付以外でBookstore AID基金に貢献できることは何かありますか。

阿久津さん:それは明確にあります。僕自身も、お金を出すことだけが支援だとは思っていないですし、「支援疲れ」も絶対色んな人に起きるだろうなと思います。

もし、やっていただけるのであれば、周囲の方に基金の活動を教えていただくのは本当に助かります。

また、「#bookstoreaid」のハッシュタグを使って、本屋さんの思い出や、「こんな所が好きだ」とつぶやいてくださるのも、ありがたいですね。

みんなが「やっぱり本屋が好きだなぁ」ということを確認できるように、色んなところで書いていただけると、嬉しいというか、いいなと思います。

ふっかー:(外出自粛で)ずっと家にいると、色んなコンテンツがあって、本屋さんの楽しさを忘れてしまいがちですからね。SNSを通して、「思い出して」もらえたらいいですね。

阿久津さん:僕も久しぶりに本屋さんに入る機会があって、それは物凄くいい場所で、感動しました。

「自分は本屋さんに、こんなに多くのものを与えられてきたんだな」と、自由に行けない状況になって初めて、実感させられました。

だから、今まで本屋さんにめちゃくちゃ恩恵を受けていたと思い出せていない人も、無数にいるのではないかと。

そこでBookstore AID基金を通して、「みんな本屋さんが好きだったよね」ということを再確認できたら、それはそれでひとつの成果だなと思っています。

まふぃさん:視聴者の方からのコメントにもありますが、読者にとって「失う前に分かる機会」を与えてくれるのがBookstore AID基金なんだと思います。

ダイナさん:どの業界・産業にとっても、未曾有の状況であるというのは言うまでもありません。ただ、隠れている課題や、噴出していない問題はまだまだあるのではないでしょうか。

本屋さんという括りにおいても、お店を閉める、あるいは低空飛行を続けていく中で、状況の変化に対応する必要がある。

そんな時に、いいアイデアが思いつくか、常にエネルギーを使えるかどうか。そのためにも、延命治療ではあるけれど、(CFは)いい方法だと思います。

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以上です。阿久津さん、お忙しい中ありがとうございました!

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