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法的紛争の助言をネットで求めるリスク

はじめに

ネット上では,法律問題について匿名で質問できる,そして匿名(弁護士も,それ以外の者も含む)の答えが戻ってくる,という場所が多くあります。
Q&A掲示板はその典型ですが,TwitterなどのSNSもそうです。「拡散希望」とか「どうしたらいいんでしょうか?」みたいなつぶやきはしょっちゅう目にします。

ネットをうろついていないで相談を

よく弁護士からはいわれていることですが,「唯一のアドバイスは,こんなところで質問をしていないで,早く弁護士に相談に行くべき」というものです。

役に立つこともあるのだけれども・・

もちろん,こういうSNSやQ&Aサイトも集合知の一種ということで,役に立たないことがないではありません。
もっとも,こういった情報は,あくまで,一般論です。また,回答は,あくまで質問者が提供した情報に基づくものに限られています。質問者が,(多分大事では無いと思って)省いた情報の有無で,結論が決定的に違ってきてしまうことは,珍しくありません。
法律相談のように,回答者が必要な情報を収集出来ない,これが大きな問題です。

相談せずにオウンゴールを決める話

ところが,なにか請求されるかも,という不安を超えて,具体的に請求を受けている,あるいはその前段階,という段階なのに,それでも未だにネットで,誰が書いたか解らないような怪情報をかき集め続けるということは珍しくありません。

私の経験上も,最初の時点で弁護士に相談していれば,お金を1円でも払うどころか不安になる必要すらなかったのに,対応を間違えて大金を支払うことになったり,さらにその段階でも,まだ弁護士を付ければ,元通りは無理でも,なんとかなるのに,それもしない,ということはしばしば目にします。

なぜネットで情報を集め続けるのか,その心理

では,どうして,オウンゴール,にっくき自分の敵対者に色々献上する結果になるのに,弁護士には相談せずにネットで質問を続け,情報を集め続けるのでしょうか

この理由として,弁護士の敷居が高い,お金がかかる,という指摘があり得ます。
この要素もゼロではないですが,匿名の情報をかき集めるのも大変ですし,今は無料相談もありますので,これだけでは説明は難しいのではないかと思います。

やはり,一番の原因は,都合の良い情報だけをかき集めることができる,ということにあるのではないでしょうか。
エコーチャンバーといって,同じ意見の人ばかりの中で意見交換をして,その意見が唯一無二の真理のように思ってしまう現象があります。
特に法的紛争は,双方が正しいと思っていますから,「自分が正しい。だから自分にとって都合の良い情報は真実であり,都合の悪い情報は真実ではない。」という思い込みをしてしまう下地があるといえます。

法的紛争についてネットで質問等するときの心理

すなわち,ネットのQ&Aサイトや掲示板で,法的紛争について質問をし,答えが戻ってきたり,それを閲覧する人の心情としては,

自分に都合の良い情報→やっぱりそのとおり!ネットde真実に目覚めることができた!
自分に都合の悪い情報→これはデマだ!たぶん,相手方・敵方の情報工作に違いない!ネットde真実に目覚めた私には通用しない!

というものが,あろうかと思われます。
一方で,弁護士に相談をする場合は,このような思い込み・気休めに陥ることは,ほとんどありません。

専門家は,ウソの気休めで喜ばせるのが仕事ではなく,相談者の将来を予測し,その利益を最大化し,不利益を最小化するのが仕事です。ですから,不利な要素も率直に話します(下手に不正確なことをいって受任してもトラブルになるのが関の山だからです。)。

そうすると,上記の様な思い込みをする「逃げ場」がなくなってしまうので,相談を忌避してしまう,ということもありそうです。
ネット上の表現トラブルにおいては,当事者双方がネットに親和性があるので,こういう状態に陥りやすい傾向があると思います。

まとめ

法的紛争というのは,感情的になっていること多く,正常な判断ができないことも珍しくありません。
そういうなかで,安易にネット上の匿名の情報にすがるのは,飲酒運転のようなものでリスクが高い行為です。
他人のトラブルとか,興味関心であるのであれば別格,自分自身のトラブルであれば,一刻も早く,弁護士や認定司法書士等の専門家に相談することをお勧めします。
参考: ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)

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