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小説・雑記

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創作物のまとめ箱 冒頭小説、掌編、端切れ
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#幻想

異界神話体系(4)

第4話 遍在神エンノイア 1-1 至高の唯一神には始まりもなく終わりもない。時間を超越しているが故に。 彼は大きくもなく小さくもない。実在に縛られない故に。 彼以前には何もなく、彼以後にも何もない。 彼は不変不動の永遠であり、万物そのものであるが故に。 彼以外の存在は全て彼に劣る存在である。 彼以外、彼を知ることはできず、見ることはできず、彼の声を聞くこともできない。 彼以外、彼に名をつけることはできず、彼の考えをはかることもできない。 彼は彼自身について考える者である。

転載

ちょっぴり長くなってきたので異界神話体系1~3をカクヨム、なろうへ転載。 ちょいちょいと加筆修正。 個人的にはカクヨムのビュワー(背景色:生成り)が読みやすい。 色々設定できるので疲れ目対策に。 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888214074

異界神話体系(3)

第3話 復讐神フリア(後)  渦巻く空に現れた穴。台風の目ではない。作為的な真円。第4の月、テトが太陽の面を覆い、それを中心に、第1から第3の月が大三角を描いている。そして静かに、朧気な女神の顔が穴を覗いて、頭からゆっくりと降りて来る。  霧が凝縮して生まれた彫像のようである。美しいが特徴のない顔立ち。六枚の翼。か細い指が都市を指し示す。都市の光が消え失せて、ひっそりと静まり返った。女神が水晶宮の上に降り立つ。小柄な、白いドレス姿。少女か女か、年の頃も不明瞭で、輪郭は曖昧

異界神話体系(2)

第2話 復讐神フリア(前)  世界にはただひとつの大陸しか存在しない。超大陸バルバティカ。その三日月状の大地に、100を超える都市国家が乱立している。すべてが神権国家である。この世界では神々の意志が最も重要である。ときには神罰のために、あるいは祝福のために、大いなる存在が天から顕現する。人々の暮らしは信仰と共にあり、それ抜きでは成立し得ない。  最大の国家、ローレンシアは叡智のソピアを主神として奉る。ローレンシアの学者らは、叡智の祝福により、精霊の奇跡の再現を部分的に可能

異界神話体系(1)

第1話 群衆神アダマス  闇に包まれた地下神殿に終わりはなく、ただ一つのかがり火が照らす薄明かりの先まで、御影石の床が続いている。床に刻まれた大きな円に沿って、瞳孔を開いた17人の子供たちが横たわる。足は円の外側に、頭が円心のかがり火に向いている。供物である。死んではいないが身動きもしない。それぞれ、喉元に毒鳥の尾羽根が差し込まれている。老いた神官は煙を上げる振り香炉を持ち、神々の言葉――只人には発音できぬ音と、旋律を伴った唄にも似た言葉――を低く呟きながら、供物の間を縫っ