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『かりん』2023年9月号掲載作品

新緑の乾いた風が吹き込んで夕焼け色の薔薇の花咲く

次々と要らなくなった本を抜くこころの窓に風が舞い込む

濃紺の明けてゆく街見やりつつ あなたがいたらと思うまどろみ

見おろしたビルの谷間を渡ってく薄墨色の鳥の淋しさ

あの頃は彼が一番好きだった それより好きな人を待ちのぞんで

ときどきは一冊もない部屋で寝るそういう自分が「本」かもしれない


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