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滋味礼讃 132 肝油ドロップ

 『肝油』とはサメ、エイの肝臓から抽出したものですが、河井製薬がドロップにすることに成功し、『肝油ドロップ』として普及しました。
 現在、薬局で販売しているものはビタミンA、Dを主成分としています。ビタミンCを主体とした製品もあります。ビタミンAやDは脂溶性なので、摂取量に制限があります。

 私が幼稚園の頃には、1日1個ということで、オレンジ色の肝油ドロップが配られていました。現在の食生活では必要がないので配られないって聞いたことがありますが、私のような昭和世代はあったんですよ。

 その肝油ドロップっていうのは、薬局で市販されている肝油と形が違っていました。現在の市販品は碁石のように丸く、白っぽい錠剤なんですが、このとき配布されたものは、まるでナッツかゼリービーンズのような形をしていて、目が覚めるようなオレンジ色をしていました。
 そしてその味は紛うことなく人工的なわかりやすいオレンジ味で、それがまた美味しかったんですよ。1日1個といわず、3個でも5個でも食べたくてうずうずしていたものです。

 今でもあのとき食べた肝油ドロップの味が忘れられません。
 もしかしたら、今食べたらそんなに感動するようなものではないかもしれませんけどね。もう手に入らないという壁と、思い出によって美化されているのかも。

 ちなみにオレンジ味の肝油ドロップは現在も発売しているんですが、形状があのオレンジ色のキュートな形ではないのです。
 思い切って買ってみようかなと思うんですけれど、「なにか違う」と夢が崩れたら嫌で、手を出していません。

 あのカーブを描くオレンジ色の肝油ドロップは、幼稚園の私にとって黄金の一粒にも勝る代物でした。
 当時だったら「純金の粒と肝油ドロップ、どっちが欲しい?」ってきかれたら、迷わず「肝油ドロップ」って答えていたことでしょうね。

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