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滋味礼讃 17 おにぎり

 今回のお題は『おにぎり』です。

 様々な具を入れたご飯を握り、海苔を巻く。それだけの工程ながら限りなくたくさんの顔を持つのが『おにぎり』の魅力ですね。手が小さい人がにぎれば小さいおにぎり。大きい人が握れば大きいおにぎりなのが微笑ましい。

 梅干し、おかかをはじめ、ありとあらゆる具があります。真ん中に入っているものもあれば、全体的にまぶしたり混ぜ込んだり。

 ちょっと塩をまぶした手のひらで握る。
 丸いおにぎりもあり、三角もあり、俵型もあり、ときには爆弾おにぎりまで。そして、海苔はしっとりするのが好きな人もいれば、パリッとしたのがいいという人もいる。

 おにぎりって小さい中にあらゆる可能性がつまった食べ物だと思うのです。
 ちょっと趣向を変えれば全然違うおにぎりになるという、選択肢が沢山つまっている食べ物です。おにぎりを包むのだって、ラップの人もいればホイルの人もいて、昔ながらの竹の皮でくるみたい人もいる。

 ところで、昔話で『おむすびころりんすっとんとん』と、おにぎりが転げていくお話をご存知でしょうか?
 私が読んでいた絵本のさし絵にはおにぎりの傍にたくあんが。おにぎりとたくあん、そして竹筒に入った水が本当に魅力的でした。

 昔話では『おむすび』ですが『おにぎりころりん』とは歌われないですね。地方によっておにぎりの呼び方は様々らしく、おにぎりとおむすびの違いには諸説あるようです。なんだかおむすびのほうが確かによく転がりそうですよね……。

 北海道に移住したばかりの頃、コンビニで「おにぎりあたためますか?」ときかれたときは心底びっくりしました。おにぎりって、朝作ってお昼に冷めたやつにかぶりつくものじゃないの? って。具材によってはあたためたほうがいいものもありますけれどね。慣れるまで随分かかりました。

 今はコンビニで様々なおにぎりがすぐに手に入る時代ですね。
 自分の家族以外が握ったおにぎりが気持ち悪くて食べられない人もいるなんて話は、ちょっと悲しくなりましたねぇ。それならお寿司はどうすんのって話ですが。
 熱いご飯を握るとき、食べる人の喜ぶ顔のために握るものだと思いたいです。おにぎりは愛情の塊です。
 手を濡らし、塩をまぶし、熱い米をちょうどよく握る。まるで抱きしめるときに押しつぶさないように、でも愛情をこめるように。そこに美味しさの秘訣がある気がします。

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