滋味礼讃 5 チューリップ
チューリップとは言っても、今回のお題は植物のチューリップではありません。鶏の手羽に切り目をいれてめくった唐揚げのことです。その形が花のチューリップを連想させるのでしょう。
私の母は手羽元でチューリップを作ってくれました。数年前、手羽先で作ったほうがポピュラーらしいと知ったときは、軽い衝撃を受けました。どちらが正解というわけではないのですが、なるほど、それで母のチューリップは茎が太かったのかと納得……(手羽の骨はチューリップの茎にあたります)
肉に下味をつけて片栗粉をまぶして揚げるのですが、夕食に登場すると本当に嬉しかったものです。それこそ本当に食卓にぱっと花が咲いたように華やぐといいますか。ハレの日の料理でした。
元々、母は料理が好きではありません。それでも、肉をめくる手間がかかるチューリップを揚げてくれたことは感謝です。
あの形がいいですね。漫画に出てきそうな骨付き肉を彷彿とさせるのです。まるで自分が海賊になってワイルドにがぶりと食らいついているようでワクワクしました。実際は漫画よりもずっと小さいですが、子どもの私には大きなロマンでした。
私の夫もチューリップが好きなのです。まだ一度もチューリップのから揚げを食卓にあげたことがないので、次の結婚記念日にでもこっそり内緒で用意してみようかなと思います。……半年以上先ですけれどね。
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