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滋味礼讃 134 七味唐辛子

 先日、ゑびす講に行ってきました。商売繁盛の熊手などの縁起物が売られ、数百の屋台が軒を連ねます。毎年とても賑わうものです。

 私は去年、初めて行ったのですが、そのとき七味唐辛子の屋台も初めて見たのでした。
 屋台では、小さな桶に七味の材料である唐辛子や陳皮や芥子、麻の実などが別々に盛られています。そして独特のリズミカルな口上を述べながら材料を特製の容器に盛って調合し、袋などに入れてくれるわけです。
 夫は小さい頃からその口上が好きで、よく祖母とゑびす講に来ては七味売りの様子を見ていたそうです。

 なんともかぐわしい香りがするんですよ。商売繁盛の縁起物ですから、ちょうどその頃にオンラインショップをオープンさせたイラストレーターの友人に送ろうと買ってきました。ビニール袋に入れていても、すんと鼻を嗅げば七味の得も言われぬ香りがします。

 七味というのは上方風の言い方なんだそうです。東京では七色唐辛子とも呼ぶんだとか。
 思えば、あだち充のSFを交えた時代劇作品に『虹色とうがらし』というのがありました。主人公たちは七人兄妹で全員が母親の違う腹違い。そしてそれぞれが七味唐辛子の材料になるものの名前なんです。胡麻とか、菜種とか、山椒とかね。

 年越しのそばなんぞに沢山かけたらさぞ美味いでしょう。
 実際、縁日のそば屋で熱々の天ぷら蕎麦をいただいたのですが、出していた七味がおそらく屋台のもので、とっても香り豊かでした。

 私は七味や一味が大好きで、そば屋でバイトしているときはまかないの天丼にも振りかける始末でした。
 そして盛りそばやざるそばのときは、つゆに入れずに、せいろに盛ってあるそばの上に直接かけるのです。自分でもいつからこうしているのか覚えていませんが、癖なんでしょうね。夫はげんなりした顔で見てきますけれど。

 磯辺餅にも七味を加えます。醤油に混ぜてからめるんですね。マヨネーズで和えて料理に使ってもいいし、納豆に入れることもあります。

 屋台の七味は夫の実家にもお土産で買ってきたのですが、自分の家には買い忘れたんです。けれど、どのみち年越しそばは実家で食べるので問題ないですね。楽しみです。

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