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滋味礼讃 127 食用菊

 山形県に住んでいた頃、結構な頻度で食用菊を食べていました。
 紫や黄色の菊の花をむしり、酢を入れたお湯でさっと茹でて、辛子醤油でいただくのです。小説の中にちょっと出したことがあるのですが、山形では『もってのほか』と呼んでおりました。

 大きなザル一杯に入った菊の花をむしる作業は、意外と楽しいものです。母や弟とおしゃべりしながら、ひたすら花びらを引きちぎるのは、豪快かつ爽快でもありました。
 ですが、同時に幼い私には少し怖く思えたのです。綺麗に咲いている花を容赦なくむしり取るんですからね。なんだか残酷だなぁと思っていました。『命をいただく』という言葉は肉や魚だけではなく、植物にも言えるのだと強烈に訴えられているようでしたね。

 北海道ではあまり見なかったと思うんですが、群馬県に越してからはちょくちょくスーパーで見かけます。
 ナスタチウムなどの食べられる花『エディブルフラワー』が話題になったりしましたが、食用菊はずっと昔から愛されてきたエディブルフラワーの先駆けと呼べるかもしれませんね。

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