これからの百貨店アパレルの生存戦略

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。


・これからの百貨店アパレルの生存戦略
・MERYトラフィック減少の理由を推測してみた
・ドルチェ&ガッバーナ炎上でラグジュアリーECは今後どう動く?
・バーチャサイズが財布のサイズ比較を開始!
・まだwebコンテンツで消耗してるの?


これからの百貨店アパレルの生存戦略

ワールド、主要アパレルブランドは苦戦もM&Aなどの効果で増収を達成

ワールドの2019年3月期第2四半期(4-9月)の連結決算は、M&Aなどの効果で増収を達成した。利益面では、為替差益の計上などもあり微増益となった。本業の「ブランド事業」は減収減益と苦戦した。「投資事業」や「プラットフォーム事業」など、ほかのセグメントが収益の向上に貢献した。

ワールドの第二四半期決算が発表され、本業では無いところが功を奏し増収達成。上場で得た資金で負債も返済し、状況は良くなっているかと思われます。ただ売上に関しては、ワールドは5年前の2013年度の連結決算では3300億円を超えていました。それが2018年3月の通期決算では2500億円を切るくらいまで縮小されています。2019年3月の通期見通しは2500億店弱と見込んでいて、売上の底は見えたような印象は受けます。営業利益率が5%程度まで上昇していますが、2015年あたりから不採算店舗やブランドを廃止していっており、そこからの売り上げの大幅な低下と販管費の改善が主な原因でしょうか。

推移を見ると、2015年からみるみる売上が下がっているのがわかります。会社に残る利益が倍くらいに伸びてますから、これはこれで良かったんではないかと。ただ、少し気になるのは、

この上期の決算資料より抜粋。資料にもあるように、不採算店舗切ってるのにもかかわらずブランド事業の数字がまだ昨対を割っています。売上構成比が77.8%で昨対95%。

ライフスタイル以外で好調なブランドが無い…。

店舗はこの半期で21店舗減。災害も相まって数字が落ち込んでいる模様。36周目がめっちゃ数字落ちてるんですけど、北海道で地震があったり台風がばんばん来たりって時期ですね。この秋冬、小売店舗は本当売上厳しいと思います。消費マインドも冷え込むし、11月にはオンライン上中心にセールが一斉開始。ブラックフライデーやらサイバーマンデーやら、欧米に合わせて国内でもセールの嵐です。欧米では年始ってセールがそこまで活況じゃないんですけど、日本はメインのセールが年始初売りなのでブラックフライデーに乗っかってしまうと、年明けちゃんと物が売れるのか心配です。

この上期のブランド別売上が上記。ブランド別で見ると、イッツデモ以外めっちゃ下がってますね。全体で増収傾向にあるものの、肝心のブランド事業は下げ止まり見えてないのでは…。


○成長のキードライバーはアパレル以外の事業にあり?

ワールドは事業の柱が三つあって、「ブランド事業」「プラットフォーム事業」「付加価値創造事業」と分かれています。

今回の増収の原因であるM&Aを含めた今後の成長戦略が上記。いまいち何が「プラットフォーム」なのかがよくわからん…。「販売」や「物流」や「EC」などの自社の持つリソースをto B向けに開放していくという事でしょうか。

こういうのもその施策の一つなんでしょう。

付加価値創造事業に関しては最近活発な動きを見せているのでわかりやすですね。

サブスクリプション・リユース・クラウドファンディングと、全くの異業種との提携や買収が目立ちます。

そして新事業ではワールドもオーダーサービスに参入予定。。既存ブランドの顧客向けでしょうから、これは普通に効果ありそう。そして、ささげ業務を効率化するサービスの展開まで。やはりto B向け事業は強化していく模様。

○百貨店アパレルは自社での商品開発を諦めた?

ワールドに限らず、最近の百貨店アパレルの動向はメイン事業では無いところが活発な印象を受けます。

例えば下記のような事例ですね。

<TSIホールディングス>

こちらは積極的に他社を傘下に収めています。


<三陽商会>

三陽商会はファッションテック系に力入れてる印象。個人的にはそこじゃない感が強いですが…。


<オンワード樫山>

ストライプとオンワードの提携はアパレル内での事例ですが、あまり見られなかった動きなので抜粋しています。


上記のどの企業も一時期よりは業績も安定しつつありますが、不採算店舗を切って売上を大きく下げながら利益を確保するという動きです。結局、アパレル事業として売上を伸ばすのであれば既存ブランドが伸びるか、新規ブランドがヒットしないと難しいのですが、それができないのが現状なのでしょう。主要販路が機能しづらくなった今、百貨店アパレルが生き残りをかけた変革の時期に入ってきているようです。


MERYトラフィック減少の理由を推測してみた

再開から1年の「MERY」に復活の兆し 19年3月に単月黒字化へ

小学館とディー・エヌ・エー(DeNA)が共同事業として女性向けキュレーションメディア「MERY」を再開させてから2018年11月21日でちょうど1年を迎えた。ブラウザーベースからアプリを軸とした事業へと変革を遂げることで、収益面で徐々に復活の兆しが見え始めている。19年3月の単月黒字も視野に入った。

再開したMERYが1年ちょっとで単月黒字が見えてきたとの事。普段、若者に接する仕事をしていますとこのあたりのトレンドは日々肌で感じているのですが、僕の周りにいる10代にMERYの存在を聞いてもほとんどが知らないという状況です。僕が取ってる統計の母数が少ないというのもありますが(およそ50人程度です。)、以前はこの環境でもMERYを頻繁に見ている若者がたくさんいましたのでどうしても過去と比較すると「若年層へのリーチ落ちた?」という印象しかありません。

○10代への認知が落ちている?

もっとも、数字だけ見ればMAU(月間利用者数)は最盛期の6分の1以下の300万人、月間PV(ページビュー)も3分の1以下の1億2000万と、以前の規模にはまだ遠い。しかし、記事の作成方法を見直し、広告主の信頼を取り戻したことで広告は満稿状態が続いているという。事業モデルも大きく変えた。

上記抜粋部分からもわかるようにユーザーもトラフィックも過去から格段に下がっている状況。

2015年当時の状況が上記。10代だけで4分の1程度います。当時の10代は今、20代になっている人も多くいるでしょうし、新規で10代のユーザーを獲得できていなくて、ここの母数が一気に減ったと推測します。ユーザーの可処分時間の奪い合いで言うとファッション関連だけがライバルでも無いかとは思いますので、若者に「ファッション系メディアで何を見ているか」とヒアリングしても明確な回答がありません。Instagramでカバーできる範囲(コーディネート、美容情報など)もあるでしょうし、好きなwebも細分化されています。何だったらレシピ動画とかの方が人気高いですね。余談ですがDELISH KITCHENとクラシルはどの世代にヒアリングしても結構な割合で見られてます。

【ユーザー数は激減】MERY読者はどこに行ったのか?どれくらい戻ってきたのか?

2018年初旬ですがこちらの記事にもあるように、特別どこかのファッションメディアが取って代わったというより、きれいに分散しているという状況は続いているようです。

○メディアの運営手法は変わったのか?

ファッション系メディアとして始まったはずなのに、今じゃ恋愛ネタや下世話な話ばかり発信するようになってしまったメディアも少なからずあり、トラフィックあげようと思うとそうならざるを得ないのかな…と思ったりするのですが、MERYは今のところ健全に運営されているようです。

メインはやはりファッション・美容系コンテンツ。

LINE@もこまめに投稿されていますし、

Instagramも世界観が統一されていてわかりやすいです。ただ、MERYって過去の施策ではヘアスタイルだけのInstagramアカウントを運用したり、発刊数限定にして紙媒体を発売したり(しかもアプリとめっちゃ連動している内容)メディア運営の先端走ってた印象あります。それと比較すると堅実に運営はされていますが、ソーシャルで拡散されるような施策はあまり無い様子。10代のユーザーを積極的に獲得する方針が社内に無いのかもしれませんね。YouTubeとかtiktokとか若年層に強いツールを強化するという気配も特にありませんし。

広告商品はすべて予約型のタイアップ広告のみ受け付けており、ネットワーク系の広告は導入していないという。
アプリのファーストビューに広告を12時間限定で表示して誘導する記事広告は、5万PV保証で260万円で販売している。トラフィック型からブランド型へと販売する商品を切り替えることで、PVの単価は倍以上になったという。「広告枠も12月までは満稿状態が続いている」とMERYの青木秀樹広告ビジネス部長は明かす。 18年11月からは動画広告の販売も始めた。こちらはアプリのファーストビューに動画広告を表示する広告商品を40万回再生保証で制作費込み400万円で販売している。

上記からもマネタイズ手法が確立され、これが原因で黒字化が見えてきているようですが、更なるトラフィックを獲得するには若年層へのリーチが課題ではないかと思う次第です。


続きをみるには

残り 2,468字 / 9画像

¥ 300

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?