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コンテンツマーケティングにMD視点が必要な理由

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・コンテンツマーケティングにMD視点が必要な理由
・sacaiがどんどんラグジュアリーブランドになっていってる…と実感した話
・マッチングサービスで「フリーランス販売員」の実現は可能か?
・対象顧客を理解しているのか不明な芸能人ブランド
・クラシルがライフスタイルメディアを開設したからそのうち物販やるはず


コンテンツマーケティングにMD視点が必要な理由

昨年、MDのスペシャリストである佐藤マサさんとセミナーを実施しまして、その際のお題が、

「ECの消化率をMD視点で考える」

という内容。

前提として、弊社で計測している限りECは消化率が店頭と比較して悪いです。(特にECモール)それを解決するには、

「MDの精度を高めていこうぜ!」

ってお話なのですが、

なぜMDの精度を高める事がECの消化率アップに繋がり、コンテンツマーケティングも機能しやすいのか。本日はそれについて解説していきたいと思います。

○MDマップとは?

マサさんのwebサイトから資料をお借りしました。上記はMD設計の一部なのですが、見ればわかるように各月ごとの計画が記載されていますね。で、計画の中には「どのタイミング」で「どんな商品」を「どの程度展開」する、といったものも網羅されていなければなりませんし、それを「店頭のレイアウトはどうしていくのか?」「どんなスタイルで見せるのか?」「どのアイテムを売れ筋にしていくのか?」というところまで設計します。こういう緻密な計画があって、初めて「精度を高める」と言えます。MDに関しては専門家ではありませんので、具体的なお話は佐藤マサさんにお任せしますが。


○コンテンツマーケティングはMD設計と連動させる必要がある

で、ここからが本題です。弊社でブランドの支援をさせて頂く際、「MD設計はありますか?」という質問をさせて頂いております。何を当たり前の事を…、と思われるかもしれませんが、ちゃんとしたMD設計があるアパレル企業って意外と少ないのです。しかしコンテンツマーケティングの効果を高めるにはMDの設計は必須になります。

アパレルは製品特性上、毎月のように販売していくアイテムが変化していきます。そして、そのアイテムの中でも「構成比」があり、強化すべき品番をあらかじめ決めておくのです。つまり売れ筋を自ら作り出す努力をしなければなりません。それをコンテンツマーケティングに落とし込むにはどうしたらいいのか?

こちらはナノユニバースのトップページですが、「特集」という項目があります。例えば「GRAMICCI新作別注パンツが遂に販売開始」という文言が掲載されたバナーをクリックすると、

その製品の良さを伝える為のページと、製品へのリンクが差し込まれています。つまり、あらかじめ投入時期が決まっている商品の販売強化の為に、そのタイミングでwebコンテンツを作り込んでおくという流れです。とっても当たり前の事なんですが、商品の投入計画、あとはどれくらいこの製品で売上を作るかを設計しておかなければ、手間暇をかけて作ったwebコンテンツが台無しになります。

こういった、どの商品をどの時期に販売強化していくか?が決まっているだけで、webコンテンツも計画的に準備する事が可能になります。これを付け焼き刃で、場当たり的にwebコンテンツを作りこんだところで、その製品の力はどうなのか?顧客が欲しがりそうなものなのか?売れる企画がちゃんと立てられているのか?販促はかけているのか?という問題点が出てきますから、その瞬間に手間暇かけても売れにくいんです。MD設計がちゃんとしてあれば、こういった計画も店頭展開計画に落とし込まれているでしょうから、それに沿ってwebでもコンテンツマーケティングを実行していけばいいのです。

上記が概要なんですが、これ見た時に普通に小売のノウハウある企業からしたら「当然の事」って認識かと思います。しかし、何度も言いますが「MD設計」がちゃんとしている企業が実はそれほど多くないのです。業界には小売出身ではなく、卸売やODM・OEM出身から小売を始めている企業も存在します。そういった企業は「モノ」は用意できるけど企画や計画を立案する事が苦手です。そんなものが無くても物が売れた時代もあったのですが、供給過多になった今の時代、そういう訳にもいきません。高い精度のMD設計を作る事こそが、店頭・EC双方に求められるのです。


sacaiがどんどんラグジュアリーブランドになっていってる…と実感した話

先日、久しぶりの紙の雑誌を手にとってみました。普段はDマガジンやweb系の記事しか読まないので、紙媒体を手にするのは数ヶ月ぶりだし、何より頻度が少ないのですが、

何とsacaiが見開きで純広告を出稿していました。これを見た時に、

「いつの間に?」

と思ったのですが、Twitterでツイートしてみても、皆さんライクが来るだけでそれ以外の反応は無し。僕の周りの方々は業界人が多く、ファッションオタクばかりですので既に知っていたら教えてくれるはずなんですが、この反応って事は恐らく初めて見た人が多いんではないかと思います。つまり、純広告を出稿し出したのが結構最近なんではないかと推測しています。


○その前に純広告って?

広告主(ブランド側)が主導となって制作した広告のことでシーズンごとにブランドが制作したビジュアル(ショップに貼ってあるポスターや屋外広告など)を使用することが多く化粧品やコレクションブランド、ジュエリーブランドなどでよく見掛けられます。

上記はプレスをされている方のブログのようなので、一部抜粋しました。ファッション雑誌を読んだ事がある方ならおわかりでしょうけど、表紙めくって数ページくらい、見開きでブランドの新シーズンのヴィジュアルを掲載しているものです。記載の通り、主にコレクションブランドやジュエリーなどのいわゆるラグジュアリーと呼ばれるブランドが主に出稿しています。今回のsacaiの純広告も表紙めくって数ページしたら出てきました。それがどうした?って話なんですが、純広告ってめっちゃ費用かかるんです。もちろん記事の場所や雑誌の種類にもよりますが、出稿するのに数百万円かかるケースもあったりします。


○ラグジュアリーブランドにしていく計画?

ここ数年のsacaiの動きを見ていますと、どうもラグジュアリー化していく方針なのでは?と勘ぐってしまいます。例えば下記。

サカイ ラック(sacai luck)はsacaiのカジュアルラインです。ラグジュアリー化していくブランドによくありがちなのが、メインのラインを強化すべくセカンドラインや廉価版的な見え方のものは廃止していくという流れ。これを見た時に、「あれ、もしかして。。」と初めて思ったのですが、

次はバッグラインの展開。ラグジュアリーブランドの戦略で重要なのは、服で露出を高めてバッグや革小物で利益を稼ぐというもの。エスメスやルイヴィトンを見ればわかるのですが、プレタポルテで稼ごうなんて思っていません。エスメスはファミリーセールに行けば衣料品の山ですし、ルイヴィトンは衣料品が全体の売上の5%程度とも言われています。しかも残れば廃棄です。

衣料品はバッグ・革小物と比較すると販売期間が限られるアイテムです。なので比較すると消化率が格段に低い。アイテムごとの消化率が高まれば獲得できる粗利は当然上がります。つまりバッグ・革小物を強化するのはラグジュアリーブランドとしては利益率を高めるのに必須条件とも言えます。このニュースが入った時に、「これはとうとう準備に入ったのでは?」と思いました。

もちろん全てのラグジュアリーがバッグ・革小物をメインにしている訳ではありません。中にはジュエリーやウォッチなどの宝飾品の場合もありますし、アルマーニのように頑なに衣料品で勝負するブランドもあります。ただ、サカイラックの休止に始まり、バッグコレクション、そして今回の純広告。日本には実質的にラグジュアリーブランドが無いと言われていますが、今一番の大本命がsacaiである事は間違いないようですね。

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