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不安を軽減する心理的メカニズム・自分を守る‘’心の防衛機制‘’

人は何らかの葛藤や痛みを予感したり、危機に直面すると自分を守ろうとする心の防衛規制が働く。ジークムント・フロイトによって提唱された不安やストレスが生じた時に、安定を保とうとする無意識的な働き、即ち自分で自分を守る心の働きを防衛機制という。その防衛機制には多くの種類があるので、いくつか挙げていこう。

抑圧

抑圧とは、最も基本的な防衛規制で、思い出したくない不快・苦痛の感情を意識に受け入れがたく、無意識のうちに忘れる、気づかないようにする。これが意図的・意識的であれば抑制という。漢字で見ると圧迫するとか押さえつけるようなイメージをもつが[排除する・消す・忘れる]といったニュアンスである。

例えば、仕事上で必要なメールを送信し忘れたり、宛先を間違える

→メールの内容に自信がなかったり、送信先の相手とトラブルを抱えていたなど、単純なミスのようにみえてそうではないこともある。

否認

現実を自分が知覚していながら、意識から排除して認めないこと。苦痛に対して「大したことではない。」と思う。認めたくない現実、不快な体験や欲求を無意識的になかったことにしてしまうこと。

例えば、「あの医者は、間違っている。僕は、うつ病ではない。」

→明らかに病気の人が、自分の症状を否認してしまい、病識を持てないことは少なくない。

転移

特定の人に向けた感情をよく似た人[精神分析の治療者]に置き換える。抑えつけられた感情や衝動を本来の対象ではない別の対象に向ける働き。陽性転移は、好意・依存、陰性転移は敵意・嫌悪の感情をもつ。

例えば、本当は自分の親に対しての怒りがあるのを学校の先生に怒りがあるような気がして反抗する。他には、父親に愛されたかった思いをカウンセラーに向けて愛情を持つ。

投影

相手に向けての感情を自分のものとして受け入れがたいため、相手が自分に向けていると思う。自分の中にある受け入れたくない不都合な感情や衝動を他人のものだと思うこと。

例えば、「彼は私を嫌っている」

→自分が相手に抱いた感情を相手のものだと思い込む。

反動形成

本心とは逆の言動をする。弱者の突っ張り。強い憎しみを抱く相手に対して好意的に愛想よく振る舞う。

例えば、人の嫌がる仕事を喜んで引き受ける

好きな女の子をいじめる。過度のお洒落をす

る。どうしても気が合わない友人がいて、理

由は分からないが、その友人にだけ丁寧に勉

強を教えている。

同一化

自分の尊敬する人や理想とする人の振る舞いや特徴を真似て欲求を満たそうとすること

例えば、ビジュアルバンドのファンが衣装や

髪型を真似る。子供のおままごと遊び[子供

が母となって自分を同一化する]

打ち消し

不安や罪悪感を生じさせた行為をやり直したり、反対の行為をとって無効にすること

例えば、浮気をした夫が、罪悪感から妻の機嫌をとる

同一視

他人の素晴らしいと思うところを自分の中に取り入れた上で、自分自身と重ねて価値を高めていこうとする心の働き

例えば、親が周囲に自分の子供が有名な大学や会社に入ったと自慢して優越感に浸る

合理化

小理屈というか、さももっともらしく理由付けをして満足する。昇華の反対で次元が低い。

例えば、受験の失敗は問題が悪いから。スキーに行きたかったが寝坊していけず、行っていれば怪我をしていたかもしれないと考える。

昇華

反社会的な欲求を社会的に適応の高いものに置き換える。次元が最も高い。

例えば、失恋してマラソンを始める。選手ではなく、マネージャーとしてチームをサポートする。ボランティア活動

逃避

現実から目をそらし、引きこもったり、空想にふける。ヒステリーは身体の病気へ逃避したからくり病である。

例えば、テスト前日に部屋の掃除をする 不安や緊張・恐怖から逃げ出すためにギャンブルにのめり込む

退行

早期の発達段階へ戻ること。子ども返り。

例えば、おねしょ・指しゃぶり・甘えたりすること。赤ちゃんのように振る舞って他人の気を引こうとする。

補償

劣等感を他の方向で補う。欲求が満たされない時、似通った別のもので満足しようとする。

例えば、勉強で負けたら、運動で勝とうとすること。

置き換え

ある対象に向けられている心のエネルギーを他の対象に向け換えること

例えば、失恋した相手への想いを断ち切れないでいる人が、失恋相手に似た別の人を好きになること

代償

特定の対象に向けられた欲求や衝動を他の対象に向けて他のものに置き換えることで自分を納得させること

例えば、高価なブランドの財布が欲しいが予算オーバーなのでノーブランドの似たデザインのものを買う

※成人した人でも未熟な防衛規制を使ってばかりいると、現実に適応するのが難しく、人間関係のトラブルにもつながることがある。対人関係に活かすならば、周囲の人を振り回す人物がいる場合には、その人の行動にどの防衛規制が働いているかを考えてみると良いでしょう。防衛規制は低次元のもの程、無意識に行っている為、その行動を変えるのは難しいと言えるでしょう。フロイトは、最も高いレベルの防衛規制は「昇華」であると述べている。








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