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絶対食いっぱぐれないだろうと思って、葬儀会社に勤めてみた。

これから転職先を検討する方へ。業界知識の足しになればと思い、ちょっとした小ネタをお送りします。求人情報には出ていない、実体験がもとになっています。読み終えたときはほんの少しだけ、業界の知識が増え、足を踏み出すハードルが下がるかもしれません。

あなたが生まれたときは、あなたは泣いて、
 周りのみんなは笑顔で迎えてくれたでしょう。
あなたが亡くなるときは、周りのみんなに泣いてもらって、
 あなたは笑顔で逝きなさい。

この素敵なことばは、私に仕事を教えてくれた、とある葬儀ディレクターさんのことばです。

X年前の春、私の勤め先がリストラを始めました。

優秀な社員はどんどん逃げ、さほど優秀でもない社員が窓際に追いやられていくのを見ていた私は、人が亡くなる限り需要はある!と安易に考え、エンディングビジネスを転職先に選びました。

葬儀会社(エンディングサービス会社)とひとくくりにされていますが、実際には3パターンほどが存在します。

① 完全仲介会社
(ご遺族と葬儀会社の間を取り持つサービスで、仲介手数料が主な売上)
② 仲介業も行うが、自社社員や自社の葬儀場(ホール、と呼びます)
 も抱えている会社
③ 完全自社社員のみで、自社ホールを所有している会社

私が勤務していたのは、②タイプの会社でした。配属先は、コンタクトセンター。葬儀前のお見積りなどを行ったり、実際にご依頼が入った際は、依頼主の地域を担当しているディレクターさん(葬儀担当者)を手配するお仕事です。

同僚や上司は、人生何回目?と聞きたくなるほどの人格者ばかりでした。夜勤もある会社で、1日の大半をともに過ごしましたが、対人ストレスが、ほぼゼロでした。人生の締めくくりを任せるにふさわしい、すてきな人たちばかりでした。

前置きが長くなりましたが、そんな素敵な会社でも、きれいごとではない、生臭い話はあります。

葬儀会社は予約制ではありません。利用時期を決められるものではないですからね。それでも、余命を悟った人からの事前相談はあります。

万一の手順を整え、プランなどもすべて決めたとき、

「よかった、やっとこれで逝ける・・・」

と電話口で安心してつぶやいたお客様もいらっしゃいました。最後に安心を提供できたのならよかった、と私もほっとしたのを覚えています。
(ちなみにそのお客様は、私が退職した後も、お元気でいらっしゃいました。)

反対に、同じように生前きちんと準備していた別のお客様のご家族に、とても複雑な気持ちを抱いたこともあります。

Zさま
70代後半 男性
職人気質で一家の大黒柱
妻と成人した息子が一人

Zさまは、半年ほど前から何度もご連絡をくださり、ご家族に負担をかけないよう気を配っていらっしゃいました。自分が見送ってほしい方をリストアップし、お酒や精進落としまですべて決めていました。

実際に葬儀会社をご利用いただくときは、生前に本人の意向を受けたご家族が連絡をしてくださいます。Zさまも奥様がご連絡くださいました。

しかし、葬儀の段取りを行う段階で、息子さんから白紙撤回の申し出がありました・・・。

「いろいろ本人が計画していたのは知っているけど、死んだ人にお金を使っても仕方ない。母も納得しているので、直葬に変更してほしい。いろいろオプションつけたみたいだけど、一切いらないから」

衝撃過ぎて、電話口で絶句したのを覚えています。

この親子の間に何があったのかはわかりません。ただ、「死んだ人にお金を使っても仕方ないから」という発言は理解できませんでした。なぜなら、ご子息様を養っていたのはそのお客様で、使う予定だったのは、逝去したご本人のお金だったからです。

結局、Zさまは「直葬」と呼ばれる、安置所から火葬場に直接向かう、ご葬儀なしのプランでこの世に別れを告げました。


まとめ

最後までお読みいただいた方は、素敵なことばを冒頭に載せて結末がこれか!
と思われたかもしれません。(実際にはもっとえぐい内容もありましたが、noteには載せられません・・・)

これは、あくまでも現実の1コマとして私が経験した内容です。良い話もあれば、悪い話もある。それも含めて、1日の大半を過ごす会社とお付き合いしていかなければなりませんよね。

もちろん、素敵なエピソードもありますよ。それはまたいつか、別の機会にお伝えできれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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