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【オメガバース小説】犬のさんぽのお兄さん【第51話】
【地方都市×オメガバース】オメガでニートの園瀬梓は、T中央公園を散歩中に謎の長髪イケメンアルファ(ダサい臙脂のジャージ姿)に出会う。その瞬間、ヒートが起きて運命の番だと分かり——!?
それからも俺達は交わり続けていたが、流石に二時間も経つと疲れてきた。そうして汗ばんだ体を京一郎の腕に預けていたら、ふと枕元の時計を見た彼が「まだ十時半だな」と呟いた。
「もうこのまま寝ようぜ……疲れた」
「何だあずさ、『年越しカウントダウンえっち』とタイトルまで付けていたのに情けないな」
「だって京一郎のち◯ち◯どデカくてカチカチだから、胎内ゴリゴリされるとすぐにイっちゃって疲れんだもん」
「物凄く下品だが、俺ので簡単にイかせられるのは嬉しいな」
「このどデカち◯こ……」
「その呼び方はやめろ」
京一郎は俺の言い草に顔を顰めると、むくりと起き上がった。乱れてしまった長い黒髪を掻き上げながら言う。
「年越しカウントダウンえっちは絶対にやるぞ。でも、それまでに何か一品作れるな……」
「えっちするまでの時間潰しに料理って、なんかスゲー微妙な気持ちになるんですけど!!」
俺は眉を寄せて叫んだが、京一郎は一向気にせずにベッドから出た。
「料理している間、フライングで栗きんとんを食わせてやっても良いぞ」
「マジ!?」
俺は京一郎の提案に目を輝かせると、ころっと機嫌を直して布団から飛び出した……。
「うんめぇ、うんめぇなコレは」
「流石あずさ。山賊みたいな食べ方をするな」
京一郎は宣言通り再びキッチンに立って、俺は向かいのスツールに掛けるとガラスの器に入れて供された栗きんとんを貪っていた。
「ちゃんとパイナポー入れてくれたんだな!」
「何でそこだけネイティブ発音なんだ」
京一郎は眉を寄せて突っ込んだが、フッと笑うと「パイナップルを入れたのは初めてだが、中中美味しいな。来年もそうしよう」と言った。
「ばーちゃんは何にでもフルーツぶっ込むからな。サンドイッチにバナナ、サラダに八朔とか」
「サンドイッチにバナナは良さそうだな。今度やってみるか」
「あ、じゃあ、前日の夕飯、ハンバーグにしてそれもぶっ込んでよ。あとトマトにチーズに卵……」
「ほう。具沢山で美味しそうだな」
「やったぜ! 京一郎ばーちゃん化計画進行中!」
「ばーちゃん化はしないでくれ……」
俺の言い草に京一郎はため息を吐くと、パントリーへ行って何かがぎっしり詰まった袋を取って来た。
「なんだ?」
「今から『そば米汁』を作る」
「あーっ! 俺の大好物! 何で知ってんだ?」
「俺の大好物でもあるからだ」
作業スペースにそば米を置いた京一郎は、次にまな板を洗いながらそう答えた。「そば米汁」とは地元の郷土料理で、ニンジンに牛蒡に椎茸、蒟蒻に竹輪、それから鶏もも肉とそば米をだし汁で煮た栄養たっぷりの一品である。もも肉と昆布だしの旨みたっぷりのそれは学校給食でも供され、子ども達に大人気だ。
「これって昔ながらの郷土料理! って感じなのに、鶏の脂たっぷりでうんめぇんだよな。山賊の俺にはぴったりだ」
「とうとう山賊を自称するようになったのか……」
突っ込みをきれいに無視して、空になった器を差し出すと「もっと栗きんとんを寄越せ!」と強請った。けれども京一郎は首を横に振って言う。
「この調子では年が明ける前に無くなるからダメだ」
「けちー! このけちけち◯ち◯!」
「何だその下品過ぎるモンスター? は!」
「おっ、モンスター? そのアイデア良いな。これからイラスト描いてやるよ。何ならTシャツとかにしても良いな」
「やめろ!!」
京一郎は顔を顰めて叫んだが、それでも包丁でニンジンを切る手はちゃんと動いていた……。
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