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【オメガバース小説】犬のさんぽのお兄さん【第53話】

【地方都市×オメガバース】オメガでニートの園瀬そのせあずさは、T中央公園を散歩中に謎の長髪イケメンアルファ(ダサい臙脂えんじのジャージ姿)に出会う。その瞬間、ヒートが起きて運命の番だと分かり——!?


 俺の代わりに年越しと同時にイった京一郎だが、俺とは違って別に恥ずかしい状態にはならなかったから不公平だった。
「どう考えても、ヤられる方が恥ずかしい目に遭いがちなんだよな!」
「仕方無い。それが受け身ということだ」
「良いよなあ、アルファは!」
 そう言ってから、アルファが受け身になっても良いんじゃないかと思ったけれど口には出さなかった。別に俺は攻めるのが好きな訳じゃない。
「さて、寝るか。今日はOA神社に初詣に行くぞ」
「えっ、態態わざわざOAまで行くん!? 別に良いけど……」
「大きな神社の方が何となく気持ち良いだろう」
「そんな理由!?」
 俺は京一郎の言い様に呆れたが、ふあ、と欠伸あくびをした。思い切りヤりまくってもう随分疲れている。
京一きょういちん◯ん、抱っこしてくれ……」
「京一ん◯ん!? また最悪なあだ名を付けたな! 絶対抱っこはしてやらない」
「そんなあ〜……」
 京一郎は新しいあだ名(?)に怒ってくるりと背を向けたから、仕方なくぴとっと背中に寄り添った。そうして暫く微睡まどろんでいたら、不意に振り返ってギュッと抱き締められた。
「何だかんだ、京一郎は甘いよなあ……俺に」
「当たり前だ。世界で一番愛しているんだから」
「……」
 こんなタイミングでベッタベタの愛の言葉を囁かれて、少し目が覚めた。俺は赤くなった顔を隠すように彼の胸に顔を埋める。
「俺も、世界で一番愛してる……」
 小さな声でそう言ったが、返事が無いので顔を上げると京一郎はスヤスヤ眠っていた。
「この野郎……」
 俺の低い呟きが、静かなベッドルームに響いた……。

「起きろ。もう六時半だぞ」
「……んぅー……」
 翌朝、ゆさゆさ揺さぶられて目が覚めた。けれどもまだまだ寝足りなかったから、俺は小さく唸ると京一郎に背中を向けた。すると、無理矢理ごろんと転がされたので「何だよっ」と叫んで目を開けた。
「OA神社までは四十分くらい掛かる。今すぐ出ても着くのは七時過ぎになってしまうぞ」
「いや、十分早いやんけ!!」
 俺はそう叫んだが、京一郎は聞く耳を持たずさっさと部屋から出て行ってしまったのではあ、とため息を吐いた。普段から早起きな彼だが、昨夜はハッスル(思い切り死語だ)したのだし、ゆっくり寝させてくれても良いのに、と思った。
 そうしてのそのそベッドから出て行くと、京一郎は昨日頑張って作った御節料理をテーブルに並べていた。蒲鉾かまぼこに田作り、紅白なます、昆布巻きに数の子、それからたたきごぼうに伊達巻だてまき。最後に俺の大好物の栗きんとんが、そして極め付きは大きな伊勢海老いせえびだ。それらはちゃんと重箱に詰められていて、他に昨夜作ったそば米汁がある。
「よーし、早速栗きんとん、いただきまーっす!」
 祝い箸を取りいきなり栗きんとんに手を付けようとしたら、さっと重箱を引っ込められたので俺は口を尖らせた。
「何だよう。別に好きな順番で食っても良いじゃんか!」
「ダメだ。お前はきっと一人で食べ尽くすからな」
「ちぇっ、バレたか……」
 仕方がないので、俺は大人しくテーブルに着いた……。

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