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【オメガバース小説】犬のさんぽのお兄さん【第58話】

【地方都市×オメガバース】オメガでニートの園瀬そのせあずさは、T中央公園を散歩中に謎の長髪イケメンアルファ(ダサい臙脂えんじのジャージ姿)に出会う。その瞬間、ヒートが起きて運命の番だと分かり——!?


「お、あの色良いな。でもネズミーは趣味じゃねえんだよなあ」
「あずさはピンクが好きだな」
「ピンクっていうかショッキングピンクな。派手な色なら何でも好きよ」
 俺が指さしたのは、テーマパークで有名なキャラクターの壁掛け時計だ。鮮やかなピンク色で、文字盤はホログラム加工されているから良いなと思った。けれどももっと素敵なものは無いかな、とキョロキョロする。
「お、あずさ。お前の好きなう◯こグッズがあったぞ。タオルに靴下、キーホルダーまである」
「おおっ」
 京一郎は色鮮やかなキャラクターもののタオルが大量にディスプレイされているのを指さしながらそう言った。俺は目を輝かせるとさまそばへ行き、ピンクの地に「う◯こ!!」と勢い良くロゴが並んでいるフェイスタオルを手に取る。
「これ良いな! 五百円だし買っちゃお!」
「う◯こで顔を拭くのか……。あずさらしくて良いと思う」
「何か嫌な肯定の仕方だな!」
 俺は顔を顰めると、ショッキングピンクの店内籠を取ってきてぽいとタオルを入れた。同じ柄のスニーカーソックスも捨て難かったので、京一郎を見上げ「なあ、これも買って良い?」と聞く。
「別に良いぞ。ふむ、二百円か。もっと良い靴下があるのに」
「ああ、ソックス屋の三足千円のやつやろ? メンズでも可愛い柄とか刺繍ししゅうのやついっぱいあるけど、何か癒し系じゃね? 京一郎には似合うと思うけど」
「まあ、実は今履いているのもソックス屋だ」
「へー、金持ちでも靴下は庶民的なんだな」
「何だディスってんのか?」
 京一郎は例によって俺の口調を真似してそう言ったから、あははと笑った。そんな風に楽しく会話しながら店内を見て回る。
「時計はここでは見つかんねぇな。実は鳩時計とかでも良いなとは思ってるんだけど。鳩じゃなくて何か変なのが出て来るやつが理想」
「何か変なのが出て来たら不気味だろう……」
 すると、京一郎にあげたのと似たようなポップな絵文字風デザインのフォトフレームが並んでいるのを見つけた。「何だ、ここでも売ってるのか」と呟きながら手に取る。
「赤ちゃん生まれたら、写真一杯撮ってよ。そんで、こういうのに入れようぜ」
「こういうのって、例のぴえん絵文字じゃないか。断る」
「えー、まあぴえんは良くないかもしれないけど、普通にリボンとかメリーゴーランドとかうさぎさんとかより、俺はポップでキッチュなフォトフレームに入れたい。そういうお子さんに育てたかった」
「何で過去形なんだ」
「交渉のときに結構有効だぜ。過去形で言うの」
「そんなの初めて聞いたな」
「よしっ! それじゃとりまう◯こタオルと靴下買うぜ! タオルは直ぐに首に巻こう。お洒落だ」
「お洒落の概念が普通と違うところがあずさらしいな」
「だろ?」
 そんなやりとりをしながら、俺達はレジに向かった……。

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