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飛浩隆「ラギット・ガール」を読んだ。

 「ラギット・ガール」は天使の廃園シリーズの2冊目で、中篇集だ。傑作。
 冒頭の「夏の硝視体(グラスアイ)」と最後の「蜘蛛(ちちゆう)の王」は、仮想リゾート〈数値海岸〉内での話。「蜘蛛の王」はとくに迫力満点で、前作で「夏の区界」を滅ぼしたランゴーニの過去が語られる。
 一方、前作ではまったく出てこなかった現実世界(仮想リゾートを開発した世界)を描いたのが、表題作「ラギット・ガール」と「クローゼット」。「ラギット・ガール」は筆者がノートでいままでの最高傑作と言い切っている。本シリーズの基本設定である「仮想リゾート」がどのようにして生み出されたかに関して言及した作品だ。「クローゼット」はその後日談。
 「魔術師」は本書のための書き下ろし作品で、現実世界と仮想世界のゲストの2つの視点から〈大途絶〉の謎に迫った作品。
 どの作品も読み応えがあり、長編を読んだような気持ちになった。それでも作者によると、本作品でようやくSF設定の3分の1が書けたということなので、先は長い。次回作はいま連載中だ。

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