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筒井康隆「夢の木坂分岐点」を読んだ。
「パプリカ」(1993)「朝のガスパール」(1992)に続き、夢を主題にした長編を読んだ。「夢の木坂分岐点」(1987)である。
筒井康隆は80年代にはすでに実験的な作風に深く踏み込んでいる。81年に「虚人たち」があり、84年に「虚航船団」があり、87年に「夢の木坂分岐点」が来た。この作品は第23回谷崎潤一郎賞を受賞している。
筒井康隆的に私小説を書くとこうなるという見本のような小説だろうか。登場人物はサラリーマンであり、兼業作家であり、専業作家でもある。成功した専業作家でもあり、失敗した専業作家でもある。それらの夢が交錯し、作家はどんどん夢の深い部分に侵入していく。
夢の描写がとにかく凄い。夢から夢へと落ち続けていく。自分の内なる人格として「侍」と「やくざ」が登場する。舞台となるのは無限に続く和室であることが多い。長屋に住み、空腹に痛めつけられるシーンが心に残る。
夢は夢みる人に試練を与えてくる。途中でだんだん読み進めるのがつらくなってくる。自分はこんな深い夢観ないなあ。
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