古城(三)by五森
やがて外れの方まで来てしまった。堀に橋が架かり、そこで内堀と外堀が分かたれている。その傍らに、他の堀からは独立した、一見すると池のような水場があった。おそらくは分離された堀だろう。鳥の姿はなく、水草と、鯉が一匹居るばかりだ。半券は近くの植え込みの陰に落ちて、堀に浮かぶのは免れた。私は屈んでそれを拾うと、向こうから歩いてくる友人に駆けて行った。
「見つかる前に早く戻ろう」
友人はやけに焦れた様子で言った。
しかし既に遅かったようで、門衛がこちらへにじり寄ってくるのに気がついた。