深志文学部

長野県松本深志高校の文学部は、部員を増やしたい一心でnoteを始めました。 部員の小説…

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長野県松本深志高校の文学部は、部員を増やしたい一心でnoteを始めました。 部員の小説を中心にユルく発信していきます。 毎週木曜日更新中! Twitterもやっています。 そちらもどうぞ。

最近の記事

Alive plants by星空

 ある国に、錬金術師の男が暮らしていた。彼は林業用具の製造、販売を行う企業のCEOに就いており、その会社は、斧やチェーンソーの国内シェア5年連続No.1と、経営状況も好調だった。 ところがその頃、彼の国では林業用の斧が凶器となる殺人事件が相次いで起こっていた。 (これ以上、殺人事件が起これば、斧に対する不安感が高まり、我が社の売上が落ちてしまう)  実際には、凶器となった斧は彼のメーカーのものだけではなかったのだが、こうした最悪を想定する思考が、彼を社長に成しあげたのだろう。

    • ネーミング By南雲すみ

      「名前を付ける」。この行為は、かなりしんどいと僕は思う。 子どもの名前。ペットの名前。人形の名前。名前を付けると、基本的にはそのものに愛着が湧いて、「大切にしよう」とか「大事に育てよう」とか思う。僕が将来子供にどんな名前を付けるのか、想像しづらいがその時になればそれなりに真剣に考えると思う。少なくとも、役所の受付で一分くらい考えた思いつきで提出することはない。 さて、文学部ということで小説を書く。その中には登場人物が必須となる。というのも、長い話であれば「彼女」や「彼

      • 古城(三)by五森

        やがて外れの方まで来てしまった。堀に橋が架かり、そこで内堀と外堀が分かたれている。その傍らに、他の堀からは独立した、一見すると池のような水場があった。おそらくは分離された堀だろう。鳥の姿はなく、水草と、鯉が一匹居るばかりだ。半券は近くの植え込みの陰に落ちて、堀に浮かぶのは免れた。私は屈んでそれを拾うと、向こうから歩いてくる友人に駆けて行った。 「見つかる前に早く戻ろう」 友人はやけに焦れた様子で言った。 しかし既に遅かったようで、門衛がこちらへにじり寄ってくるのに気がついた。

        • 台湾研修レポート「台湾のお茶文化」byだて

          ※この文章は「深志高校台湾研修」のレポートの一部を加筆、修正したものです  台湾研修3日目のB&Sプログラムで、猫空(マオコン)を訪ねた。  私たちが滞在していた台北から鉄道で「動物園」駅へ。そこからロープウェイに揺られること30分。合計1時間ほどで猫空という山中の土地に立っていた。  一言に「山中」と書いても、日本の(まして長野県の)山とは様相がまったく異なる。  気候区分的には亜熱帯、沖縄本島よりも緯度が低いこの山には広葉樹が多く、ツル植物もところどころに見られる。針葉

        Alive plants by星空

          教えてくれ by雪村平良

           贅沢はしなくていい。スーパーの安いカップラーメンで腹を膨らませて、顔にできたにきびに恨み事を言う毎日の方が絶対に面白い。  有名にならなくていい。誰にも注目されることなく、驕らず、静かに社会の歯車になっている方が私に似合っている。  人の上に立たなくていい。ふかふかした椅子の上でふんぞり返っている奴なんて、私の一番大っ嫌いな人種だ。誰かのことをこき使うよりも、誰かにこき使われて疲れ果てた後、自分の家のベッドに倒れ込む方が寝覚めがいいと思うし。  とかなんとか、偉そうに

          教えてくれ by雪村平良

          親知らずを抜きましたbyまみむめも

          こんにちは。まみむめもです。 あれは雪の日でした。水分を多く含んだ雪で、ふわふわというよりはべちょべちょ。道路には多くの水たまりができていて、私はブーツを履きました。 右上下の親知らずの抜歯をしました。 全身麻酔で行うという選択肢もありましたが、私は局所麻酔で行うことにしました。 病院に足を踏み入れる前は緊張はほぼゼロでしたが、いざ病院へ入ると、その独特な空気感が作用したのか、だんだんと不安が募っていきます。微妙な待ち時間もなんとなく落ち着きません。 名前を呼ばれて案

          親知らずを抜きましたbyまみむめも

          特になんでもない by春野

          窓に雪がつくような寒い日の授業中、瞬きの瞬間、そこは夏だった。 蝉の鳴き声と羽音がやけにうっすらと聞こえて、突然夏の記憶が蘇った。 木から溢れ出した空と葉っぱの影の色が混ざって、目を焼き尽くしてしまいそうなあの夏の色。 暑さにやられたコンクリートがアイスと一緒に溶けたあの匂い。 東京に単身赴任した父親に会いに行ったついでに美術館へ行くために歩き回った、慣れない道の景色。 その全てが教室の中に充満した。 いや、私の周りだけだったかもしれない。 とにかく、それは夏だ

          特になんでもない by春野

          ディスタンス by星空

           「わたし、人との距離感がわからなくて…よそよそしかったり、ぶつかり過ぎちゃうことがよくあるかもしれないけど…こんなわたしで良かったら、よろしくお願いします」  「付き合ってください」というあまりにもベタでなんの捻りもない僕の告白を彼女は笑顔で受け入れてくれた。  その後の生活はというと、内容もないのに長電話したり、二人並んで下校したり、休日一緒にデートしたりと毎日が夏休みのように明るい気分でいられる。ただ、言ってた通り、彼女は人との距離感がわからない人だった。  例え

          ディスタンス by星空

          ザ・テレビジョン By南雲すみ

          こんな話を聞いたことがある。二十年も前からある話で、とある人から説明された。 六月六日の午前六時五十九分に、テレビの前で「ラキツイコンプ」(昔は別の言葉だったらしい)と絶え間なく唱えると、時刻は七時を刻むことなく、六時六十分を表示する。ちなみに他の時計は、アナログでもデジタルでも正常に動いている。ついているチャンネルはどこでもよくて、重要なのは「ラキツイコンプ」と唱えることにあるらしい。 そして、しばらくして画面に六時六十六分と表示されると、テレビ画面に「六時六十六分男」

          ザ・テレビジョン By南雲すみ

          古城(二) by五森

           そこは古城の敷地に建てられた博物館の裏手で、建物を通り過ぎると、いよいよ私たちと城を隔てるものは内堀だけであった。視界については遮るものがなく、古城の全容が見えた。晴天により、堀には古城の反射が美しくあった。そのため実物は存在感はそのままに、反射の方に生気を吸い取られているように見えた。妙に硬く縮こまっており、それはこちらに飛び掛かかろうと筋を収縮させているからだと、そう思えた。私たちは古城の間合いに入り込んでいたのだった。  視界の左にこちらに背を向けた門衛が入り込み、先

          古城(二) by五森

          ゲームの面白さの総合性 byだて

           ゲーム好きな兄のおかげで、私は今まで多くのゲームに触れてきました。その中から、私がゲームから学んだ、あるいは好きなゲームの共通項を語ります。 ゲームの要素 ゲームとは総合作品である。そう私は思います。音楽にビジュアル、ストーリーラインと操作性・ゲーム性。どれかたった一つだけで成り立っているものはありません。  それを強く感じたのは『ゼノブレイド2』。  中身の詳細は省きますが、ただ言えることは「傑作ゲーム」であること。  ストーリーには涙あり感動ありちょっとのギャグあり(

          ゲームの面白さの総合性 byだて

          習慣にしていること(割と普通……だよな?) by雪村平良

          何か面白いことを言いたいけれど、結局何も思いつかなかった雪村平良です。休日は家族以外の人と話さないので、コミュニケーション能力が低下しているのかもしれないですね。話し相手を早急に募集しなくては。 面白いことが言えないのなら真面目な話をしよう! ……ということで、今日は私が習慣にしていることについて書こうかなと思います。 二度寝とか、SNSのチェックとか。私の習慣と言えるものは割と普通です。割と普通……なんですけど、今回はその「普通」な習慣の中でもちょっとイレギュラーかもしれ

          習慣にしていること(割と普通……だよな?) by雪村平良

          友達ってどんな人のこと? byまみむめも

          「友達ってどんな人のこと?」 _________ 「自分の内側を隠さずに見せ合える人」 君の目はここでないどこか遠くを眺めていた。 「本当の中身を見せても恥ずかしくないし、気まずくないって、思える人。そして、相手にもそう思ってほしい。ぼくはその人の真の姿、絶対に拒まない」 「絶対に」そう断言できる強さに惹かれる人が一体何人いるだろうか。 それは、どんなに屈強な鎧よりも頼もしい。 確かに芯の通っている言葉が、そう確信させる。 _________ 「やっぱり自分を作ってはしまうけ

          友達ってどんな人のこと? byまみむめも

          主人公好きか、脇役好きか、それ以外か by春野

          我々は全ての人を平等に愛すことはできない。それは周知の事実である。 実際、知らない人より身近な友達の方が親愛の気持ちが湧く。そもそも愛するということを定義するということは愛せるものと愛せないものを比べているのに違いなく、その時点で我々は全てを平等に愛することができていない証拠なのではないかと私は思う。 堅苦しく書いたが、つまり我々は愛情になんらかの順位づけをしている。優先順位をつけていると言い換えてもいい。同じくらい好きだったとしてもその日の気分や最近の関わり合いなどによっ

          主人公好きか、脇役好きか、それ以外か by春野

          自分語りnights by星空

           最近、夢に神様が出て来る。  だからといって、お告げや予知夢をくれる訳でもないし、願いを訊いてもらえる事もない。むしろ、話を聞いているのはこっちだ。まるでカフェにてミルクティー片手に親友と駄弁ってるかのように、知らなくても生死には関わらない事を話し続ける。  きっと今夜も、  「でさ~、それでジンサったらセンスがないの、ホントに終わってる。だってさ、いくらなんでも出張土産がストラップってあり得ないよね? それを貰ってどうすれば良いのって話〜 着けたくはないし、かと言って二

          自分語りnights by星空

          冬休み By南雲すみ

           本日は一月四日。三ヶ日が終わり、会社へ出勤する人や地元から帰ってくる人がたくさんいるのではないでしょうか。  文学部は基本的に書き物をする部活です(以前の投稿にも同様の内容を書きました)。小説でも詩でも短歌でも俳句でも何でもアリです。ですが、ただ書き続けても似通った作品ばかりが生み出されるだけですし、何より作り手側が楽しくなくなってきてマンネリ化してしまいます。そこから脱却するためにはどうすればよいのか。  それは、自分以外の作品に触れることです。ある人の作品を読んでみ

          冬休み By南雲すみ