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「藤村くんちょっと待ってくれ」大泉洋という"人間"に対峙する、必勝コンテンツ論

SNSは「動物園」、水曜どうでしょうは「野盗」

T木:
今日はヤンデルさんもお酒を持参されました。

ヤンデルさん:
「飲食持ち込み可」というおかしな注意書きがありましたので。

藤村:
わたしもこの「カウンターバー」でね、ビシッと話します。

SNS有名人に共通する基準。多くの「見物人」が集まる理由は…

藤村:
こうしてnoteの企画でね、SNS上の有名人と話しててオレ思うんだけどさ、例えばTwitterだと、なにか期待することがあるから多くの人がそのアカウントをフォローするわけでしょ。

ヤンデル先生:
なるほど。

藤村:
カツセさん、シャープさん、ヤンデル先生にしてもさあ、SNS上で自分からいろんなことを発信してるわけじゃないですか。で、好きで見てる人たちはその人たちが言ってることを「なるほどなー」と納得できる。納得できるから日々フォローしたり、ちょっとの時間を使って見たりしてるわけでしょう。ということはさ、今の多くの人たちは「納得できる話を聞きたい」っていうことなのかな。

ヤンデル先生:
……逆じゃないでしょうか。

藤村:
ほほう、そうなのかい?

ヤンデル先生:
SNSで誰かをフォローするのは、動物園の動物を見にいくのと一緒、って言いますね。
具体的な基準としては、「突飛」「日常にいない」「ちょっと可愛らしい」「不細工」とかです。SNSで美しいものとか素晴らしいものを見たい人は美術館とか博物館的なアカウントのところに行くんですけど、美術館よりも動物園の方が人多いですし、世代も幅広いです。じゃあ何で動物園の方が混むのかって言ったら、よくわかんないけどなんか可愛い、汚い、ウケる、和やかだ、みたいなことなんですよね。

藤村:
なるほど、若干臭かったりもする。

会場:(笑)

ヤンデル先生:
そうそうそうです。臭いもするし、なんだったら何か飛んでくるかもしれない。SNS 、特にツイッターは「そっち系」ですね。

藤村:
そうなんだ。

ヤンデル先生:
3月号で登場したカツセマサヒコっていうのは、ツイッターでは少ないほうの、「美術館側の人間」といいますか。

藤村:
そうだよね。ヴィジュアルもね。

ヤンデル先生:
見た目かっこいい、すらっとしてる、文章もスタイリッシュ。彼の対談イベントのあと、とあるファンがリプライを送ってましてね。そこにはイベントの内容じゃなくて「あの靴、買ったんですね!」なんて書いてるわけですよ。オシャレの話をしている。
でもそんな彼も、藤村さんとの対談でボコボコにされたじゃないですか。

藤村:
わははははは。

ヤンデル先生:
やっぱりツイッター的、動物園的な展開ですよね。読者は「あのカツセさんでもやられるんだ・・・!」ってなります。そうなると次に控えるシャープとの対談回では、「シャープはどうやってこのイベントを切り抜けるんだろう」ってことに興味がわくんでしょう、より前のめりな人が見物しにやって来るわけですよ。ところがそこで見事にシャープは渡り合いました。するとこのあたりで、運営側は、「あぁ、風向きがまずい、オシャレになりかけてる、じゃあ『動物』をそろそろ登場させないと」って考えて、僕なんかが呼ばれるわけですよ。

藤村:
へぇ~。オレらはやられてるとかやられてないとかっていう気持ちは全く無いんだけど、そういう感じなんだね。

ヤンデル先生:
いや、もうみんな緊張の面持ちで挑んでます。

藤村:
なはははは。まぁ、オレらは元々が野盗みたいなもんですから

ヤンデル先生:
や、野盗ですか?

藤村:
なんかほら、水曜どうでしょうっていう番組を観るとわかるけど、お互いに最初は一応仲良くやってるつもりなんだけど、段々噛みついてくるじゃないですか。全体的に下世話じゃない。だって、最終的には「お前大学出てんのか」とか「バカじゃねえのか」とかっていう、本当中学生レベルの会話で終わるわけだから。そういう意味では確かにね、我々はスタイリッシュではない。美術館ではない。

ヤンデル先生:
なのに、このマガジンのタイトルは『Wednesday Style(スタイル)』ですからね・・・。

藤村:
いや、だからいいなと思ったんだよ。俺も本当はそうしたかったの。

会場:(笑)

藤村:
そうしたいんだけど、いかんせんやってるうちに本性が出ちゃうんだよね(笑)

「水曜どうでしょう」は自分の家を拡張した存在

ヤンデル先生:
きれいなだけじゃない、という意味でいうと……。
「どうでしょう」の4人にはなんか自宅感があるというか、当事者感があるというか。今日、藤村さんがこの会場にいらっしゃったときの一言目が「(入り口で)ジンもらった!」ですよね。

会場:(笑)

ヤンデル先生:
僕は、なんだか、「じぶん家に父親が帰ってきた」みたいな雰囲気を味わいましたよ。「今そこで誰それさんに会ってさ、ジンもらったよ」みたいな感じで。おまけに「コンビニで氷買ってきたわ、これ入れりゃあすぐ飲めるっしょ」って。ここにお母さん的存在がいて「グラス出しますから」なんて言ったら、これもう完全に「家庭」ですよね。

藤村:
なははは。家ね。そうだねぇ。

ヤンデル先生:
突然の「家感(いえかん)」がありましたよ。「あ、これが素の藤村さんという方なんだなぁ」と思って。さっきイベントがはじまったときも、僕はあそこで棒立ちでしたけど、藤村さんと嬉野さんが話してる内容はそのまま「水曜どうでしょう」になりそうでした。掛け合い方ひとつとっても、もうこれはDVDの副音声そのものだなあと、ちょっと感動して見てたわけです。
そこで、思うのは、あなた方はもともと「家で番組をつくってる」ところがあるというか。

藤村:

はいはいはい。

ヤンデル先生:

僕らツイッターの文脈でやってる人間は、こしゃくにも「動物園の動物です」って言ってますけど、「どうでしょう」はどちらかというと「自分の家」を拡張してってるんですよね。

藤村:
あ~、たしかに。

ヤンデル先生:
これじゃあ勝てませんよ。だってなんでもいいんですもん。今すぐお手洗いにも行ける、みたいな。

藤村:
確かにイベント中によくお手洗いに行くんですよ。だからそう、確かに自分の家、自分の空間にするっていう意識が非常に高いところはあるね。よくイベントとかでスタッフの方が動線とか気にするわけですよ。「こちらの通用口から入ってください」とか。でもさ、「なんでオレの家なのにオレが通用口から入らなきゃいけないの」みたいな感覚があって正面から入るわけ。

ヤンデル先生:
あはははははは。

藤村:
で、「お客さんと目が合っちゃったり一緒になったら・・・」みたいなことも言われるわけですけど、家族とか親戚みたいなもんだから、別に隠れる必要も無いし、ワーッと囲まれたらさ、いいじゃないの。「オレ人気あるなぁ」みたいな。それに囲んでくれる人は大体酒とか持ってきてくれるから。

ヤンデル先生:
「ご近所さん」みたいなのまでいる。

藤村:
だから別にいいじゃんって。「家感」はあるかもしんないね。

どうでしょう班の「幸せ」は願わない。大事なのは「面白いか」だけ。

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