【10月号対談再掲】お客さんと繋がれば、もう、広告はいらない。『水曜どうでしょう」のあっさりした革命。
10月藤村さん

【10月号対談再掲】お客さんと繋がれば、もう、広告はいらない。『水曜どうでしょう」のあっさりした革命。

藤村忠寿

皆様こんにちは。『Wednesday Style』編集部です。
今月も、11月よりご購読いただいた方向けに10月号対談を再掲いたします。今月はご購読いただくことでこのシャープさん対談記事に加え、今月末に公開予定の病理医ヤンデル先生との対談と、音声コンテンツ「腹を割って話すラジオ」をお楽しみいただけます。

※本記事は2019年10月号の記事と同じものです。お買い間違いの無いよう、お気を付けください!
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それでは、対談記事をお楽しみください!

広告とは、テレビでCMを流すことに非らず!

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T木:
今回の『腹を割って話すナイト』のテーマについて、事前にシャープさんからメールをいただいていたので、まずはそちらから紹介させていただきます。

「家電にしろコンテンツにしろ、個人の創作でない限り、作る人と売る人は分業がなされています。私は長らく売る方に、広告という形で携わってきましたが、テレビを見るにしてもスマホでSNSをやりながらというのが当たり前になってきた時代。広告が機能しなくなっているという実感があります。あまりに情報が多すぎて、売り物を届ける以前に、広告が届かない。企業が言いたいことがユーザーに届かない時代に、何とか別の方法で伝えようと、私はTwitterをやっています。が、ふと、『水曜どうでしょう』のおふたりを見返すと、作る人と売る人の分業がされておらず、さらに言えば、言いたいことがすいすい伝わっているようにお見受けするわけです。その実際のところをお話しできればと思いますが、まぁそうならなくてもいいと思います」ということでございました。

藤村:
なるほど、なるほど。

T木:
『水曜どうでしょう』のおふたりは、作る人と売る人の分業がされてないし、しかも宣伝の言葉であってもお客さんに届いてるのは、どうしてなんだろうと。

シャープさん:
そうですね。例えば、おふたりはYouTubeされてるじゃないですか。『水曜どうでそうTV』

藤村:
やってますね。

シャープさん:
今、YouTube上に、どれくらいのペースで動画が公開されているかというと、1分間に300時間分ぐらいだそうです。

T木:
えー! そんなに。

シャープさん:
そのペースを計算してみると、今日1日だけでYouTubeに公開された新動画を私が全部見ようと思ったら、49年かかるんですよ。24時間、不眠不休で。

藤村:
ほおー。

シャープさん:
そういう状況の中で、僕はWEBのコマーシャル動画を作る仕事に関わっているんですけど、例えば完成した動画を「よし、できた!」といって公開したところで、誰も見ないわけですよ。世の中に情報が多すぎて。

だから結局何をしているのかというと、コマーシャル動画を見てもらうための広告を打つわけです。YouTube再生前に広告が流れますよね。ああいうやつです。要するに、広告を見てもらうためにもう一回広告している状態なんですよね。

T木:
なるほど。CMの広告を作るという。

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シャープさん:
僕はもともとネットではなく、テレビコマーシャルや新聞広告を作る仕事をやっていたんですけど、ある時代までは広告を作って公開すると、一定数は世間の目に触れるという保証があったわけです。視聴率や発行部数という形で。

藤村:
そうだね。

シャープさん:
それが今はまったくなくて、何をやっているのかよくわからないことになってるんですよね、広告の世界って。何というか、頭がおかしいんですよ。

会場:(笑)

藤村:
僕なんかは、そもそも広告って何なんだろうと思ってますよ。広告に対して、いいイメージはまったくない。僕は物事を非常に単純化して考えるんで、広告をするってことは、やましいことがあるんじゃないかと思っちゃう。

シャープさん:
何かを取り繕うっていうことですか?

藤村:
そう。本当にいいものだったら、広告しなくても伝わるわけじゃないですか。

シャープさん:
そうですね。

藤村:
人に何かを伝えるということは、まず書くことで伝えられるようになり、音声を使ってより多くの人に伝えられるようになり、それからテレビっていうものができて、映像を使うことでもっと広く伝えられるようになったわけじゃないですか。

僕らの時代っていうのは、まさに映像っていうもので多くの人に情報を伝えられるようになって、それを謳歌した時代なんですよ。今でも形は同じなんですけど、発信できるのがテレビだけの特権ではなくなってしまった。インターネットとSNSの登場によって、誰でも情報発信できるようになったというのが、昔と今の大きな違いなんです。

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藤村:
今まで、テレビ局や広告会社は「我々がやれば、沢山の人に知られますよ」っていう絶大な力を持っていた。だけど、それは単にそういう時代だったというだけで、あれこそ僕は虚構だと思っているんですよ。

シャープさん:
たまたま、そういう時代だっただけだと。

藤村:
そうなんじゃないですか。それに、いろんなものを広告してきたことで、果たして人の生活は良くなったんだろうかとも思っています。

食べ物にしたって、生活用品にしたって、「CMで見たからみんなが買う」っていうのは、経済的な論理の中で商品が回っていただけの話でしょう。「CMによって本当に良い製品を手に入れた」というのとは違うわけですよ。だからCMの広告効果が低下しているというのは、時代として当たり前の流れかなっていう気がしますよね。

シャープさん:
昔が異常だったっていう考え方ですね。

藤村:
僕は、そうだと思います。あれこそ異常だったというか。テレビコマーシャルで、みんなの心が躍ったっていうのは、単にひとつの時代であって、あれが広告であると考えてしまうのは大きな間違いだって気がするな

あれをいまだに追い求めている広告マンがいるとすれば、その人はきっと広告っていうもの自体を考えたことがないんじゃないですかね。


『水曜どうでしょう』の最初の目標は、高視聴率をとることだった。

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シャープさん:
藤村さんって、テレビ業界にいる人なのに、どうしてそんなに引いた視点で見れるんですか?

会場:(笑)

シャープさん:
僕は広告を扱う部署にいますけど、昔の成功体験から抜けきれない人なんかいっぱいいるわけですよ。ある程度のお金を投じれば、一定数の注目がこっちに向くって考えている人が。人の認知や好意を自動販売機のように手に入れられると思っている人が、今もいるんです。

藤村さんが、そうじゃないと思えるようになったのは、地方でやられていたからという部分もあるんですかね?

藤村:
いや、僕は、入社して最初の頃は北海道テレビの東京支社にいて、そこで大手広告代理店の人たち相手に、CMの枠を売るという広告の仕事をしてたわけですよ。そういう仕事をしている中で、これはシステムとしておかしいなっていうのが、ものすごくよくわかったの。

視聴率という基準で、CM枠の金額を計算して、それを売り買いしているわけじゃないですか。それって、つまり番組の内容なんてどうでもいいってことなんですよ。

シャープさん:
そうですよね。

藤村:
たまにはいますけどね、「うちの製品は、あの番組と相性がいいから、そこでCMを流したい」っていうスポンサーも。だけど、それは稀な話です。

ほとんどは、ただ単に視聴率というものを基準にしてCMを売り買いして、それを流せば、広告主はもう満足みたいな感じだもの。実際にCMによって製品が売れて、社会のためになったのかとか、そういう検証がテレビCMの中でなされてるのなんか見たことがないですからね。

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藤村:
それって結局は、広告というよりも、テレビCMっていうひとつのビジネスなんだろうなと思うわけ。それをやることで人に伝わるかどうかってこととは、まったく別物だなって。

シャープさん:
その番組がオンエアされている時間帯に、何人が見ているかっていう数だけで、伝わったか伝わってないかを判断していたってことですよね。

藤村:
そうだね。でも、シャープさんなんかは、「どうやったら人に受け入れられるか」っていう中身の方を考えて、CMを作ってるんじゃないですか?

「こうしたら、もっと人に知ってもらえる」とか、「うちの製品の、いいところが伝わる」とか、作ってる人はそういうことを考えているんですよ。でも、売り買いの現場は、そことは関係ないっていうね。

シャープさん:
作る人と売る人が分業になっているから。

藤村:
CMを売り買いする現場っていうのは、「視聴率10%あれば、そこそこ使える番組。2%しかなかったら、クソ番組」っていう見方でしか判断してないわけ。その番組に対して作り手側がどんな思いを込めているかとか、見ている人がどういう思いを抱くかなんて、まったく関係ないっていうかさ。

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藤村:
僕も、そういう現場を経て、自分がいよいよ番組を作るってなったら、反対側の立場になるわけですよ。

その時に、僕が考えていたのは、「視聴率だけはとろう」っていうこと。視聴率1%とか、2%の番組っていうのは、もうテレビとしての体をなしてないというかさ。テレビ局的にいえば、作らなくていい番組なんですよ。

T木:
『水曜どうでしょう』を作る時の最初の目標というは、視聴率をとることだったんですね。

藤村:
とにかく10%以上、2桁の視聴率をとるっていうのが、もうすべての目標。大泉さんが売れるとかは、まったく関係ない。

会場:(笑)

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藤村忠寿
『水曜どうでしょう』チーフディレクター(HTB北海道テレビ放送)。愛知県出身。最近は甘いものよりもお酒(特にクラフトジン)が好き。著書に『けもの道』(KADOKAWA)。嬉野雅道との共著に『腹を割って話した』(イースト・プレス)、『仕事論』(総合法令出版)など。愛称は「藤やん」。