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ジブリ版「耳をすませば」と「カントリー・ロード」の思い出

1995年に発表された宮崎駿脚本のジブリ映画「耳をすませば」。この映画では、ジョン・デンバーの名曲「カントリー・ロード」(原題: 「Take Me Home, Country Roads」)が映画の最初から最後までを串刺しするように使われている。いきなりオープニングでは、オリビア・ニュートン・ジョンのバージョンの「カントリー・ロード」が流れる。そして、映画の中では、主人公月島雫が「カントリー・ロード」の和訳を作る、ということが物語の重要な要素としてでてくるのである。雫が作った「カントリー・ロード」は、エンディングに流れるのであるが、原曲の歌詞とは、まるで正反対のことを歌っている。

【ジブリ版カントリーロード】
カントリー・ロード
この道 ずっとゆけば
あの街に つづいてる
気がする カントリー・ロード
(中略)
カントリー・ロード
この道 故郷へつづいても
僕は 行かないさ
行けない カントリー・ロード

【原曲版カントリーロード】
Country roads, take me home
To the place I belong
West Virginia, Mountain Mamma
Take me home, country road

ジブリ版の「カントリーロード」は、故郷から新しい未来への道を示している。一方、原曲の「Country roads」は、街から故郷への帰郷を歌っている。

このジブリ版は、月島雫が、これからの自分の道を自分自身の100%の力をぶつけて「やり抜く」という意志が込められている。実際、雫は自分に課した挑戦、すなわち「物語を書く」という目標をやり抜くことで、観る人に深い感動を与える。

ところで、オープニング曲には、オリジナルのジョン・デンバー版の「カントリー・ロード」ではなく、オリビア・ニュートン・ジョン版が使われた。これは、日本では、オリビア・ニュートン・ジョン版が朝の情報番組「おはよう700(セブンオーオー)」の看板コーナー「キャラバンⅡ」で使用されたことがきっかけで、日本で大ヒットしたことで、おそらく、宮崎駿らの世代には、オリビア・ニュートン・ジョン版が、もっともポピュラーだったからであろう。私の子供時代も世界中を車で旅行する「キャラバンⅡ」が大ブームで、学校に行くと、よくその話題で盛り上がったことを思い出す。特に印象深かったのは、灼熱の国で、あまりにも熱すぎて車のボンネットで目玉焼きを作ってしまう、というエピソードであった。それを、ガキ大将格のふじい君が得意気に話していたのを思い出す。そして、そんな遠い異国の映像のバックに流れるオリビア・ニュートン・ジョンの美しい歌声のカントリーロードは、外国人すらほとんどみたことがない、ごく普通の日本の子供達をドキドキさせた。私達、近所の子供達は、どうにかオリビア・ニュートン・ジョンに手紙を書きたいと思い、辞書を使って、習ったこともない英語を無理やり使って、ファンレターを作ったのである。その子どもたちに混じって、ひとり中学生のお兄さんがいたので、その方の力を多分に借りたのだと思うが、どうにか子どもたちだけで、英語のファンレターを作り上げて、出したのである。この手紙が遠い異国の地に届くのかと思うと、頭がクラクラした。この手紙をオリビア・ニュートン・ジョンが読んで、一生懸命に書いたこの日本の子供を愛らしく思い、感謝の手紙を返してくれるかもしれない・・・・などと夢見ていた。
もちろん、返事は今も届いていない。そして、2022年にオリビア・ニュートン・ジョンがこの世を去ったことで、彼女からの返信は永遠に来ないことが確定したが、彼女の歌とそれにまつわる思い出はいつまでも私の心に残り続けるでしょう。


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