変な話『いつものイヤな友人』

 僕には、よく一緒にいるがあまり好きではない友人がいた。
 友人は、事あるごと僕に嫌味を言ってくるのだ。
 突然の雨に降られて、ずぶ濡れになった僕を見て
「天気予報を見れば良かったじゃないか」と家を出てしまった以上、取り返しようのない指摘をしてくる。
 僕が財布を落とした時には
「いつか落とすと思ってたよ、君はズボラだからね」と言ってきた。
 何が嫌かって、一番はいつもそう言う時、鼻で笑っているのだ。
 僕がダメな人間に見えて、惨めになる。
 そのあまり好きではない友人と歩いている時、僕は何も無いところで躓いて転んでしまった。
 僕は、手をついた拍子に血は出ないまでも、ほんの少し手の皮を擦ってしまった。痛がる僕を見て、友人はこう言った。
「痛がる演技、上手だね」
 僕は腹がたった。無茶苦茶、腹がたった。今まで積もり積もった鬱憤が溢れ出し、僕は言い返した。
「いや、演技だったらこうだよ!」
 僕は、大袈裟に転び直し、大袈裟に痛がり、のたうち回った。
 勢い余った僕は、横に並んでいた花壇に突っ込んだ。
 その時、僕の右腕と僕の右腹部からボキッ!!と音がした。
 そのあと音とほとんど同時に激痛が走った。
 僕は、右腕と右の肋骨を折ってしまった。
 そして僕は運が悪かった。突っ込んだ花壇には、立派なサボテンが植えられており、棘が身体中を突き刺した。
 そこからの記憶はほとんどない。
 でも、そこから僕を助けてくれたのは、あまり好きではない友人であった。救急車にも一緒に乗ってくれた。花壇の持ち主の家にも、一緒に謝りに着いて来てくれた。
 僕は、友人の事があまり好きではなかったが、もう頭が上がらなくなってしまった。

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