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脱成長企業:成長を止めて幸せになる

日本最大級の観光ガイドエージェンシー『Japan Guide Agency』運営のJGA株式会社 代表の藤原です。Japan Guide Agencyでは「地域・文化観光をアクセシブルに」をミッションに掲げ、全国で訪日外国人向けガイドツアーを開催しています。

経済成長は目指すべき目標か?

2022年5月の水際対策緩和以降、訪日外国人旅行者数は順当に回復し10月には新型コロナの感染が拡大した2020年以降はじめてコロナ禍前を上回ったとの報道がありました。

おかげさまで訪日外国人向けにガイドツアーを提供している弊社もコロナ後に売上を伸ばし、また未曾有の危機が発生しても1年半はスタッフにお給料を払えるほどの余力ができました。

経営に余裕ができたタイミングで今後会社をどうしていくか、上場を含むいくつかのオプションについて検討しました。まず決めなければいけなかったことは、このまま経済成長を目指すべきか?また目指すとしてどこまでの成長を目指すのか?ということです。

自然界では止まらない成長は病気

私たちは、『成長』を無条件に賛美します。子どもの成長を喜び作物の成長を喜びます。成長は自然現象でありあらゆる生物は成長します。

しかし自然界における「成長」と資本主義における「成長」には大きな違いがあります。自然界における「成長」には常に限界があります。子供の身長は3メートルを超えて大きくはならず、作物も永遠に実をならせることはできません。生物はあるところまで成長すると健全な均衡状態を自然に維持するのです。

一方資本主義における「成長」はちがいます。資本主義は資本の無限蓄積を目指す終わりのない成長運動です。資本主義下で生まれる余剰利益は再投資され、さらなる成長に向けて再投資されます。その成長運動には終わりがありません。人間の幸福も社会の充実も関係なく、生産増大による余剰利益の蓄積それ自体が資本主義においては目的化されます。

自然界において止まらない成長はコーディングエラーであり病気です。成長そのものを目的として増殖し続ける癌細胞はやがて人を死にいたらせます。資本主義における「成長」は病的であり癌細胞と変わらないといえます。

人間の幸福度は一定レベルで経済成長との相関を失う

人間の幸福度はある一定レベルから経済成長との相関を失うことが判明しています。世界一のGDPを誇る米国における幸福度は1950年代以降は横ばいもしくは右肩下がりです。これは日本においても同様で幸福度を測る指標であるGPI(真の進歩指標)は、GDP(国内総生産)比べて1970年代以降伸びが鈍化しています。

あるレベルからGPIは伸びなくなる
「GDP神話」を超えて~「豊かさ」を伝えるための新たなアプローチ~

人類は確かにある一定レベルまでは生産性向上によるGDP拡大によって裕福に幸福になりました。しかしある一定レベルを超えると人間の幸福度と(GDPをベースとした)経済的豊かさは相関性を失います。いつからか人は稼いでも稼いでも幸せになれなくなるのです。

人も地球もこれ以上の成長を支えられない

資本主義下では成長拡大を止めることができません。労働生産性が上がり、少ない人数で今までと同じ量の生産物を作ることができるようになると余剰人員は更なる経済規模拡張に向けて再投入されます。

生産性を上げたことで更なる規模拡大圧力が発生する現象は「生産性の罠」と呼ばれ、人類は地球が許容できる範囲(プラネタリーバウンダリー)を超えて成長拡大を続けています。

資本主義下の「成長」が実現するものは一部の資本家のための際限ない資本蓄積だけです。資本分配されない多くの人にとって「成長」は必ずしも幸福な暮らし実現を意味しません。働いても働いても生活は楽にならず幸福も感じられないなかで、社会は何のために成長を目指すのでしょうか?

成長し続けなければならないという思い込みは、ここ数世紀のあいだに埋め込まれた幻想に過ぎません。

成長を止めて幸せになる

こう考えたとき、弊社JGAは現時点で自分たちにとって必要な資本蓄積(内部留保と利益見込み)はすでに達成されたと判断しました。これ以上の「成長」は私たちの規模のチームには必要ありません。私たちはこれ以上の成長を望まないこととし、今後「経済成長」を主目的とすることをやめることにします

その代わり今後、売上貢献の有無に関わらず、社会的に価値ある活動に注力してより一層のリソースを投入していくことにしました。

例えば、JGA株式会社ではこれまで以下のような活動を行ってきました。

・主要観光スポットのバリアフリー対応状況調査
・食事制限をもつハラル等対応レストラン調査
・身体障害者サポートを目的とした介助支援研修

上記活動はいずれも短期的には売上に貢献しませんが社会的意義を感じて採算度外視で実施して来ました。(もちろん長期的にはツアー品質向上につながり顧客満足度に反映されるとの期待もあります。)
今後はこうした取り組みを更に推進し、組織がもつ資金や人的リソースを社会課題解決に向けて振り分けていく予定です。

例えば低所得世帯の子どもの約3人に1人が抱える「体験格差」の解消に向けた活動などはひとつの方向性になり得ます。これら活動は売上や利益には直結しませんが社会的に意義があり、また社会還元の取り組みによる外部コミュニティとの繋がりは私たち自身の幸福実現にもつながっていきます。

売上や利益につながるかを度外視して社会的意義やインパクトを価値観の柱にすることで、我々は自由な発想を手に入れ、より野心的で精力的な取り組みが可能になります。

脱成長は停滞を意味しません。経済成長を伴わない定常状態が目指すものはGDPでは測れないより豊かな社会的発展と幸福循環の道です。

成長を止めて幸福を目指す試みを決断した今、これから起こるさまざまな可能性にワクワクしています。

皆さんはこのまま経済成長を目指しますか?
目指すとしてどこまでの成長を目指しますか?


参考書籍:



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『Japan Guide Agency』は、約750名の通訳案内士が登録する日本最大級の通訳ガイドエージェンシーです。​全国47都道府県で、訪日外国人向けガイドツアーを展開しており、月間1,500本を超えるツアーを催行しています。

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社名:JGA株式会社
静岡県知事登録旅行業 第2-706号
本社:静岡県静岡市清水区江尻東2-67-3
設立:2013年
​資本金:1,000万円
代表取締役:藤原 一成

Value:日本の豊かな地域性と文化への感動と敬意
Purpose:誰もが気軽に地域の暮らしや文化体験を楽しめる環境の実現
Mission:地域・文化観光をアクセシブルに

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