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また「タンポポ綿毛」のマイクロノベル 他3篇 #43

 わ、そんな押さんといて、恐いやんか。もう、みんな行ってしもうたな。そやな、勇気あるわ。うちらだけになってしもた。そろそろ覚悟決めるか。やっぱり高いとこ恐いやん、足がすくむ。おまえ、いつから足生えたん?

 はや「躑躅」も咲き始めた。でも漢字で書くとどこか暑苦しいから、これからの時期は「つつじ」と平仮名で呼ぶことにしませんか。花に向かってそうつぶやいてみたら、そうしましょう、そうしましょう、と囁いてきた。

 花が終わった藤棚に実が成りはじめる。子どもの頃、この時期だけ公園にやってきて、藤の実を毟り取って、そら豆のように焚き火で焼いて食べる爺さんがいた。「藤爺」と呼ばれていたはずだが、誰も憶えていないという。

 さあ、今年もチューリップの止葉コンテストの季節。花の下、二枚の葉っぱが見せるその仕草を競います。えいやー、ありゃまあ、だめだめ……あなたは審査員ですから評価点と技の難易度から勝者を決めるのです。

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