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「アマガエル」のマイクロノベル 他3篇 #4

 やあ、雨が降るとやっぱり元気が出るなぁ。もりもりご飯食べて、冬眠の準備といくか。なんでも、人間は寒いのに冬中起きてるそうやからな。たいへんやな。まあ、じーっと寝てるのも、それはそれで大変なんやけどな。

 夏やからか知らんけど、ニンゲンどっか行ってしもたなぁ。そうやな、戻ってくるやろか。どやろなぁ、その頃にはこっちが冬眠してるんちゃうか。そうか、冬眠から目が覚めたら、もうニンゲンのことなんて忘れてるな。

 雨音に目が覚めると、上から下まで緑色に変わっていた。いや、自分のこの手も足も身体も。ちょっと鳴いてみた。今日はカエルの日 、この日だけ塒(ねぐら)は芭蕉の葉に変わり、自分も蛙に帰ることができる。梅雨入りが近い。

 実は葉の通貨でしか買えないものが、世界にはある。それもハキリバチがブドウから丸く切り取った葉しか、その通貨として成立しない。「あなたが葉の通貨を探すようにならないことを祈る」それがこの国の別れの挨拶。

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