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「メタセコイア」のマイクロノベル 他3篇 #71

 メタセコイアのシルエットの三角が夕焼け空をつつくとき、そこに開いた穴から夜の帳が広がってくるんだ。どうせ嘘だと思ってるだろう。でもね、百年に一回くらいは本当にそんな日があると聞いて、眺めているんだよ。

 よく晴れた穏やかな日には、まれに紅葉が硬化する現象が起こる。そんな日は、葉と葉が触れあって奏でる音を聞いて過ごす。でも、最近はそんな音すらうるさいと、公園の樹を伐採して回る団体がいるから困ったものだ。

 そこに生えていると思っていたのは、いかさまの草。もう何年もずっと生えたままだ。「お-い」と呼んでみても、向こうにいる人も同じ。ずっと立ちっぱなし。まあ、自分だって、いかさま仲間なんだから仕方がないな。

 株元が紅い日本ホウレンソウを食べたくて、タネを蒔いて少し大きくなったけれど様子がおかしい。どうやら、長日植物で外灯があると日が長いと勘違いしたようだ。ホウレンソウは、夜更かしすると薹が立って花が咲く。

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