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「槐」のマイクロノベル 他3篇 #102

 槐(エンジュ)の数珠のような莢の膨れ方で、次の世界の順番が決められているのだと、お釈迦様の方から聞いた。その莢を乾燥して生薬にしたものは槐角(カイカク)と称し、薬として使われる。使う度に世界の順番が入れ替わり、未来も変わる。

 ヒメムカシヨモギが、窓を拭って世界の先をほんの少しだけ見せてくれる。風は強くワイパーは激しく動く。でも、明日は草刈りでここもきれいになってしまうのだ。少し先も見えなくなる、世界は土砂降りなのだけれど。

 ノブドウの実は、世界のカラータイマーだと教わった。虫がどうやって未来を感じ取るのかわからないけれど、中に虫が寄生することで、実の色が変化するのだという。ともあれ、青い色ならまだ少し時間はあるみたいだ。

 本当の世界の仕組みは、夕暮れの空に流れる雲と迫り来る闇の色への変化によって、編み出されて行くそうだ。そう聞いてしばらく黄昏の空を眺めていたが、その心地よさに時は瞬く間に流れ、世界の秘密は浸みていった。

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