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「ヘラオオバコ」のマイクロノベル 他3篇 #13

 密かにヘラオオバコの花の造形を愛でる集会がある。花序から伸びる雄しべの円環の数と美しさ、そして花序の配置を競う。それは大変人気で、この時期多くの宇宙船が地球を訪れ、ヘラオオバコの宇宙番付が決まる。

 フォックスフェイスと呼べば獣のように駆けだし、カナリアナスと呼べば空へと舞う。そして、ツノナスと呼べば種子を残して枯れていくのだ。さあ、お前は何になりたい? なになに泳ぎたいとな、どうしたものか。

 パーロット咲きだからと、チューリップに歌を覚えさせたのは誰だ。一日中、はとぽっぽを歌っていてうるさくて仕方がない。夕方には歌い疲れて、花びらが開ききってしまったよ。どこから声を出しているんだろう。

 今日はタンポポの演奏会。タンポポは古来「鼓草(ツツミグサ)」と呼ばれ、鼓を叩く「タン、ポン、ポン」という音から、その名がついたということだ。さあこの大地に寝転がって、その音色をとくと聞かせてもらおう。

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